ベンツ社長
それは…たかが喫茶店に高級外車で通う純情社長と、そこで働くウェイトレスの恋物語



第3話  Side Kira

習うより慣れろ!?









「アーキハッバラステーションを降りて、徒歩5分だからすぐに見つかると思うよ」


キラは言われた言葉をくり返す。無論、メモを取るわけではなくて全く別の意味で。



「アーキハッバラ?アーキハッバラ…アーキハッバラ………」



秋●原じゃないか!





「我が国が誇る最先端の電器屋街だ!」


ウズミは自信満々に語る。キラはげんなりした。



こんな…オタク街がこの国の誇る街?もう、この国はお終いかも知れない。


キラは思う。どこをどう考えてもネコミミメイド喫茶は誇りじゃない!…と。



「はいはぃ。判りましたよっ。行けばいいんでしょ行けば!」







半ばやけ気味になって店の中に一歩入れば、異様な熱気で迎えられ、今すぐ即
刻引き返したい気分になった。

「キラちゃんvようこそいらっしゃいだにゃん♪」

「みんな今か今かと待ってたにゃんv」



「……………。スミマセン僕…バイトできたんですけど…」



すると店長が奥からすっ飛んできて、キラの肩をがしと掴んだ。


「すばらしいっスーバーラーシーイ〜〜〜!探し求めていた僕っ娘だぁあ!さ
すがはアスハ先生の選ばれた最高の逸材だvグゥレイトッ」


茫然とするキラをさしおいて、周囲は異常なほど盛り上がっていた。



「2ヶ月だけというのは実に悔し…じゃないっ淋しいけど、これからキラちゃ
んも僕たちの仲間だからねっ!一緒にこの喫茶あしたばを支えていこうねっ」





本日2度目の発見。それは………。


喫茶あしたば………?あしたば…アシタバ………明日、葉………。



「アスハ」じゃないか!!!



すぐ隣をじろりと睨むと、カガリも真っ青になってぶるんぶるんと首を振って
いた。つまり彼女も知らなかったらしい。


つとカガリが小声で話しかけてきた。

「あのアホ親父は私がボコにしておくから。キラの手を汚すことはないからな」


「………ぅん…」







そして、今日から同僚になる人の紹介を順次受けた。


最後にやってきたのは、年輩の男性店員だったが、いかにもマジメそうな外観
にやはりネコミミは不似合いだった。



「最後に彼!彼が当店切っての人気ウェイター。トダカさんです。よろしくねっ」

ちょっと堅物そうな感じに、思わずのけぞりながらも挨拶をした。



「キ…キラ・ヤマトです。よ、ろしくお願い…します」

「カガリ・ユラです。よろしくお願いします……」


そして人気ナンバーワン男性ウェイター・トダカさんの自己紹介に、二人はし
ばらく意識を飛ばした。



「ようこそ。いらっしゃいませだにゃん」



まじめそうな顔で…まじめそうな声で……微動だにせず………低い男声で言わ
れるストイックな「いらっしゃいませだにゃん」に、開いた口がふさがらなく
なった。





「すごいでしょ〜彼vこの客に媚びようとしないストイックさが、女性リピー
ターに大受けで、連日大盛況なのよ〜〜〜〜〜」


あ然呆然。

ここは何かが…という生易しいレベルではない。


全てが完全に狂っていると思う。



果たしてこんなところで2ヶ月も持つのだろうか。不安は初日にして最高潮に
達した。







「ブラッボ〜〜〜!ブラボー!グゥレイトっ最高ッ!最高に可愛いよっキラに
ゃんっ!!!」


仕方なく…本当に仕方なく(もとはと言えばウズミが返さなかった給料のせい
で)、着替えて来るなり店長以下従業員は狂喜乱舞した。


しかも…「キラにゃん」に「カガリにゃん」ときたもんだ。


どう考えてもこの制服、確かに露出は少ないが異様に恥ずかしい。





「大丈夫さ。すぐに慣れるし、君たちなら今日からでもナンバーワンを狙える
ことは確かだよ」


というのか…ここ(かなり萌え系に走っているとはいえ)喫茶店なんですけど?
店員にナンバーワンとか、ナンバーツーとかそういったものはないのでは?



「スミマセン。ナンバーワン………って…」


「頑張って目指そうねっ!順位が上がれば上がるほどボーナスが出るんだよ」

一瞬キラの瞳が輝いた。

ボーナス?


そんなの聞いたことない。いや、たかが(萌え系とはいえ)喫茶店のバイトで
ボーナスは嬉しい。





「え?ボーナス?出るんですか!」


「出る出る!当喫茶店ご利用一回無料券を成績に応じて支給しているんだ。ど
う?垂涎モノの条件でしょv」


聞かなきゃ良かった。それが正直なキラとカガリの反応であった。

二人にはそれ…要らない。



「………はぁ…」


「とりあえず、君たちは女の子だから、男性のお客様を担当していただくこと
になるんだ。入ってきたら、こんな感じで「お帰りなさいませだにゃん」と可
愛く言ってあげて、お席を案内してあげてね」



「………………………」

「ほぉら、おっきな声で可愛らしくv」





やらねばならなかった。慣れねばならなかった。

それというのもウズミが金を返さなかったから。


こんなことを2ヶ月も続けていかねばならなかった。







「こ…こんな感じ………ですか?」


「もうちょっと自信を持って!笑顔!笑顔!」


「………。お…お帰りなさいませ………だ、にゃん?」

「ん〜いいよぅいいようvだんだん慣れてくるからねっ。それで、お帰りの時
は「行ってらっしゃいませだにゃん」だよv」



ああ〜〜〜〜〜。完全に「萌え系」だ。

嬉しがって腰まで振り出す店長を後目に、キラとカガリだけが異様に冷めていた。



そうして、キラにゃんとカガリにゃんのアルバイト生活は始まった。







カランカラ〜ン。


二人は言われたとおりに応対する。

「お…お帰りなさいませだ………にゃんv」


「うぁあっ。看板の子だ。君…初めて?」

「え?あ……はぃ」


「大丈夫だよ。心配しないで。ボクが君をナンバーワンウェイトレスに育てて
あげるからね」



キラは早速げんなりする。No.1ホステスじゃないんだから!!


しかも…しかも!

ナンバーワンの座…ハッキリ言って要らない。


ここの喫茶限定タダ券要らない!!!


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言い訳v:実際のアキ●系萌え喫茶なんて行ったことありません。ので捏造。トダカさんは弟くんとの会話で生まれた絶品(ぇ)次回、もう1回アスランサイド行きます。

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