ベンツ社長
それは…たかが喫茶店に高級外車で通う純情社長と、そこで働くウェイトレスの恋物語
第1話 Side Kira
うまい話には裏がある?
割と順調に過ごせる予定だった夏期休講。運命のイタズラは1本の電話であっ
た。
伯父であるウズミから持ちかけられた、喫茶店でのバイトの話。
おいしそうな儲け話に、つい乗ってしまったのが運の尽きだったのかも知れな
い。イヤ…それも今から考えると、幸運の始まり?
けれども、あの時は散ッ々伯父を恨んだものだ。いわく、
<普通の喫茶店>
<注文を取ってくるだけの簡単なお仕事>
<制服が人気>
<キラちゃんは可愛いからすぐに看板娘になれるよv>
どれも…ウソじゃなかった。
だが!だがしかしッ!駄菓子菓子(←表現古すぎ)
「ウソじゃなきゃ、何言ってもいいってもんでもないでしょ〜〜〜〜〜!」
キラが携帯電話に向かって絶叫したせいで、行政府にいるウズミのみならずそ
の周囲の政治家たちも、のきなみ腰を抜かしたという。
確かに…「ウソ」じゃない。
普通の喫茶店…地域限定で比較するなら、たしかに「そこらじゅう」で営業し
ている。
注文を取るだけ…確かにそれがウェイトレスの仕事だ。ネコミミセットと萌え
系ハートエプロンさえしなければ。
そして…制服が人気…一部のマニアの男どもにな。
「もっと静かに喋っても、おぢさんは充分聞こえているぞv」
「そぉいう言い方が変態くさいんですよ!」
そうだ。事前によく確認しなかったキラにも責任はあるかも知れない。
だが………ウズミほどの政治家が紹介してくれたアルバイト。普通まともな喫
茶店だと誰もが疑いはしなかっただろう。
「この制服…どう考えてもオタク喫茶じゃないですか!」
たかが喫茶店の制服に、ネコミミと尻尾は要らない。
「違う違う!最近はやりのインターネット喫茶とか言うところだよ」
キラの想像する普通の喫茶店は来客時に「お帰りなさいませだにゃん♪」とか
言ってポーズを取ったりなんかしない。
決してしない!
ましてや「ご主人さま〜」とか言って注文を取るなんてあり得ない!
「ネッ喫のどこがオタクじゃないっていうんです?」
「キラちゃんは若いから、まだまだ世の中のことを知らないんだよ。世の中の
10年先をその街では見ることができるんだ。全ての流行はそこから始まって
いると言っても過言じゃない。キラちゃんは未来へタイムスリップしているんだ」
もはやあ然となって二の句が継げなかった。
ものは言いようと言うのか…丸い卵も切りようで四角というのか………。
「叔父さん…僕別のバイト探しますから、この話断ってもいいですか?」
途端に沈黙が走った。どうやらウズミの顔が真っ青になっているらしい。
周囲の狼狽ぶりがかすかに伝わってきて、少し悪いかなとも思わないでもなか
ったが、萌え系喫茶にどっぷり浸かるよりはマシそうだった。………が!
「イカン!イカンイカンイカ〜ン!もうキラちゃんのことは店長に言ってある
のだ。そしたら店長、大喜びして、期待の新人が来るって触れ回して……」
「………………………え…?」
しかも…だ。
「早速渡してくれって…キラちゃんの2ヶ月分の給料を預かっている」
はい?
給料?
前払い?
それも2ヶ月分?
「叔父さん…?」
キラの声が低くなった。言葉に怒りが混じるのは致し方のないことか。
「何だねキラちゃん」
「夏期休講…2ヶ月あるんですよ」
「なら大丈夫だねっ」
「課題とか結構あったりするんですが…」
「え?あるの?へぇ〜頑張ってね」
「そーいうのやる期間とか全然考えてませんよね?」
「………あ…」
「あ、じゃないですよ!あ、じゃ!どうしてくれるんです!」
「うぅ〜ん…でもお金はもうもらってるし(←手放したくないらしい)、じゃ
ぁ頭数を増やすか?友達でも誘うとか…」
「ともだちにこんなとこ紹介できるわけないでしょうが!変態オヤヂ!カガリ
にしてください」
「……ぇ」
「カガリと一緒じゃなきゃ僕、お断りします」
その後しばらく、受話器から聞こえてきたのは、ウズミのうなり声だけだった。
しかし、結局ウズミは折れた。←お金を返すという発想は既にない
「い…いいだろう。役には立たんかもしれんが、うちのバカ娘を応援によこす」
そのうち撮影所のほうから声がかかった。
「キラちゃ〜ん、撮りに入ってもいいかなぁ〜」
この業界独特の甘ったるい声。そんなしゃべり方にもつい鳥肌が立った。
「ちょっと叔父さん!大事なことを聞き忘れてた。茶店でバイトするのになん
で写真撮影をする必要があるんです?」
と、問うとウズミからとんでもない答えが返ってきた。
「指名1位になりそうな子は全員写真を撮る習慣があるんだよ」
そして…写真は店の表に額縁入りで飾るという。
それって…それって………ッ!
「ここはホストクラブかキャバレーか!!!(怒)」
「まぁまぁ〜。これも人助けだと思ってv余のため人のため♪」
「叔父さんよの字が違う。それを言うなら世の中の世ッ!!」
「あとでたくさんおごってあげるから」
「当たり前です!僕にこんなコトさせて!」
交渉は成立したが感情的には思いっきり決裂したまま電話は終わった。そして
…キラは耐えた。既に渡ってしまったお金のため。
正直小遣いはのどから手が出るほど欲しい。だから耐えた。
後日、その写真が等身大に引き伸ばされ、店の前にデカデカと飾られても、目
をつむって見ないフリをすることにした。
ウズミは後日ボコにしたところで罰は当たるまい。
(叔父さんのうそつき!これって単なる呼び水じゃん!)
sorehatakagakissatennikoukyuugaishadekayoujunjoushatyouto weitoresunokoimonogatari
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言い訳v:ウズミさんは秋山の頭の中でもはやまともな人ではないのです。あのマジメな姿こそ世間を欺く仮の姿なのです(笑)次回はアスランサイドからお送りします。
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