開設4周年記念だぶん

そのき込み系!

<前編>


「おかしい!絶対におかしいんだ」

 キラは言う。眉間にしわを寄せて。


「アイツがおかしいのは今に始まった事じゃないだろ…」
 彼女の姉はいつも通り呆れた顔で返事を返す。妹と、その彼氏。端から見れば理想の恋人像に見えるのだろうが、ここまで近くから見たら勘違いも良いところだ。



「おかしい!今回は徹底しているんだ」
「だから、何が?どういう風に?ハッキリ言わないと判らないぞ、キラ…」


 そこまで言われてキラは指折り数え出す。

「玄関先のカメラは配線を切られていたし、部屋に付けた盗撮データも全て別の映像が上書きされてた。あげくに隠しといた盗聴器を全部発見されてたんだよ!?信じられる?フツーしないでしょ?寝室ならまだしもトイレと風呂に付けた盗聴器まで!全部だよ!?全部!」

 カガリ〜〜〜と、キラはそのリスのような紫の瞳をうるうるさせながら姉にすがって悔しがった。





 その瞬間、ぱこ!と、妹の頭ははたかれる。


「非常識なのはお前だキラぁあああああッ!!!!!」



「なんでそんなこと言うんだよ?まさかカガリもアスランの味方するの?」
「いや、だからといってアイツの味方もしたくもない

 あくまで中立………という聞こえの良い安住地に逃げていたいらしい姉。



「というか、初めからちゃんと言えばいいのに…アイツ……」


 それがこの2年、妹とその彼氏に振り回されてきたカガリの本音。





「ダメだね!アスランそこんとこ絶対秘密主義だから…」

 素直に聞いてポロッと喋ってくれればこんなに苦労してないよ、とキラは言う。


「まー確かに、何か急に思い込んでは、黙ってフラ〜ッとどっかに行っちゃうタイプだからなぁ…」
 友だちの集団からいつの間にかトンズラされた経験数知れずの前科ありだ。








 外見からは想像も付かないアスランの悪い癖。訳あって離れていた妹と大学から一緒になった。最初にキラにやたら不服そうに<幼馴染み兼彼氏です>と紹介されたとき、さすがにカガリの胸もときめいた。少なくとも外見+声+初対面の対応は完璧だ。
 だが、付き合いを続けていくうち…その気持ちは薄皮を剥ぐように薄れ………今ではこう思う。


「キラもよくアイツに付き合ってるよなぁ………」


「仕方ないじゃん?僕が浮気でもしたら町中が戦争状態になるんだから。ああ見えてアスランの嫉妬ってめちゃくちゃはた迷惑だし…」
「……………。それは同感…」








 冗談半分で、要らないなら私が貰ってやるぞ…なんて言った2年前の気持ちが嘘のようだ。

 キラが明後日の方向を向きながら話してくれたことがある。高校時代、生徒会の活動を通じて別の男の子と仲良くなったことがあった。ある夏休み、その男の子に告白されたことがあった。


「アスランと付き合っていないのなら、俺と付き合わないか?」

 その男の子はアスランと二分するほど校内で人気のあった子であり、キラも少しは憧れていた。が、数日もしないうちに<彼女との交際を巡って剣道で三本勝負>とかいうことになり………話は小さな町の隅々を駆けめぐり………多くの野次馬からからかわれる羽目になった。



 結局かろうじて勝ったのはアスランで。後でキラはその子に泣きながら頭を下げて謝っていたら、迎えに来たアスランに真っ黒なオーラバンバンでジロリと睨まれて……また話が大きくなりかけた。





 それ以来、

「アスラン貰ってwww」
「ごめん被る」

「気持ちよく貰ってw…てか、いっそカガリの彼氏と交換しない?」
「天地がひっくり返っても無理」


 という姉妹の会話は冗談では済まないレベルになった。








「ガッデム!こーしてコソコソコソコソしてるときは、絶対何か悪巧みしてるんだから」
「だからといって、アイツの部屋の盗聴盗撮はやりすぎだ」


「念には念を入れてザラ家本宅にも付けて置いたのに……」



「………」

「……………」



「…………………ハァ!!!??」



「月に何度か忘れ物とか要るものを取りに帰ったりしてるんだよね。だから本宅は外せないよ。セキュリティのクロックは楽だったんだけど、警備の目をかいくぐって傷だらけになりながら設置したのに………」

 つまり、デジタルではなくアナログに苦労したらしい。警備員さんの目を盗むの大変だったんだよ?大型犬に追いかけられて地獄を見かけたんだよ?本当に苦労したんだよと、キラは涙ながらに話す。



 すぱこ〜〜〜〜〜ん!



 カガリは無造作にあった本棚のテキストで妹の頭を容赦なくはたいた。
「痛いカガリ!酷いカガリ!僕が…僕が何したって言うのさ〜〜〜」

 いかにも自分は悪くないですってかちょー可哀想でしょちょっとぐらい同情してくれても良いじゃんいやここまで来たらいっそ手伝って的なイメージに見えるが、話を聞く限りどう考えたってキラが悪い



「盗聴盗撮は立ッッッ派な犯罪だ!ちなみにセキュリティーシステムのクロッキングもな」
「アスランだって似たようなもんだからいいんだよ」

「本宅は別だろ!お前、アスランのご両親の盗撮見て何か楽しいか?」
「………?アスランだけだよ?人物認証録画プログラム組んであるし…」



 そして、意味判らなぁいときょとんとしている妹に天誅が下った。


「下らないことに必死こいて才能を使うなぁぁあああああ!!!!!!!!!」


言い訳v アスキラも書きたい、双子漫才も書きたい…両方を取ったらこういう形になりました。カガリとその彼氏だけが常識人です。
次回予告 前半が双子漫才と言うことは、後半はアスキラにシフトします。このサイトでは珍しい真っ黒けっけ悪巧み知能犯アスランです(笑)


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