34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第8話−

 近くに行くと、だんだん声が聞こえてくる。キラは、相手の男に腕を掴まれ、嫌がっているように見えた。

「離してっ!離してってばっ」

「そうは行くかよ!何で急にいなくなったりするんだ」

「もう君には関係ないもん」

「俺が何をしたって言うんだ!言ってくれなきゃわかんないだろう!」

「嫌ッ離してぇ…」

「離したら逃げてしまうじゃないか!とにかくちゃんと理由聞かせてくれよ」


 アスランが近づくに連れ、口論の内容がハッキリ耳に入ってくる。

 キラが本気で嫌がっているのを理解したとき、何よりも先に身体が動いていた。つかつかと近づき、アスランは自分の身体でキラをかばうように割り込み、相手の男の腕を掴む。



「こんなところで誘拐でもするつもりかお前は!」

「なんなんだよアンタは!何にも知らないくせに、アンタには関係ないだろ!」

 逆上して睨みあげる瞳に、アスランはカチンと来た。


「到底話をするって雰囲気にも見えないが」

「アンタ…キラの一体何なんだよ!」

 後ろでキラが怯えているのはよく判った。掴んでいた男の手を離し、彼女の肩を、彼女を励ますようにしっかり掴んだ。


 そして小声で彼女に伝える。

「俺は君の恋人。そう言うことにしておいて」

「……ぇ……っ」


 一体何を言われたのかも理解出来なかったようなキラ。しかし、彼女に説明している時間を、アスランは持ち得なかった。殴りかかろうとしていた男のこぶしを、とっさに片手で受け止める。

 じぃん……と、鈍い痛みが肩まで走った。


「彼女と…キラと付き合ってるんだ。目の前で自分の彼女が困っているのに、助けない男などいないだろう」

「何寝ぼけたこと言ってるんだ!キラと付き合ってたのは俺だ」


(………え”……)

 アスランの頭の中に、後悔という言葉がよぎった。


(もしかして…俺、スベった?)


「なのに…いきなりキラのほうからいなくなったんじゃないか!」


(……何?ということは、別れ話のもつれ?)

 さすがに額に冷や汗が伝う。



「探したんだぞキラ!何か言ってくんないと、わかんないじゃないか」

 アスランが庇おうと知らずに抱き込んだ形になっていたキラは、あからさまに震えていた。

「彼女は今話せる状態じゃない」

「学校まで変わって!俺が嫌ならそう言えばいいだろ!」

「君ッ」


 相変わらずキラは震えていた。震えながら、男の名を呼んだ。

「シン…ぅ…ぅそじゃ……ないよ。僕…、もう君とは付きあえない……」


「何で!そこの新しい男がちょっと顔が良いからかよ!」

「違う…違うよ……」


 震えながら言われる言葉。それはそれでちょっぴり傷つく。そして、キラは叫んだ。

「僕はもう、耐えられないんだ。バレル君とのいい仲に割り込む不毛な女って言われるの……も……辛くて…」

 季節違いの木枯らしを聞いたような気がした。目の前をカラスが数羽歩いていったような幻覚さえ見える。



「………ホモ?」


「だって…みんなが、そう言って………」

「ちょっと待て!どういう事だよ!」

「だから、君がモノホンだって話だろ?」


 さすがのアスランも、ちょっと…イヤかなり引いた。この男…シンが「本物」なら、自分もターゲットに入る可能性がなくもない。

(冗ぉ〜〜談じゃないッ!!!)


「違う!確かにレイとは友達だけど…俺、そんな……」

「でも…バレル君には付き合ってる男の人がいて……だけど、シンとも付き合ってて二股かけてるって…」


「「…………………は?」」

 さすがにセリフがハモった。

「噂だけど、嫌なの!信じたいけど、信じられないの!みんなの目もあるのッ!!」



 どれだけ時間がたったのだろう。さすがに固まったまま駅前劇場を続けるわけにもいかなかったので、アスランはシンにやんわりと断りを入れた。

「ショックなのは判る。悪いけど、今日は引き取ってもらえないかな?」

「けど…」

「彼女の気持ちを優先したい」

 シンは、こくりと頷いた。


「俺からキラに色々聞いておくから」

 手元にメモがなかったので、シンに自分の携帯番号を口頭で伝えた。シンは慌てて自分のポケットから携帯を取りだし、そのナンバーにかける。一瞬だけ着メロがなって、すぐに切れた。



「後でも良いので、教えてください。俺も、今聞いた話初めてで……正直よく判らないです」

「判った」

 シンが背中を向けて去っていく。背中を見ても、彼が心底しょげているのがよく判った。





「大丈夫。彼は行ったよ…」

 視線をキラに戻し、優しく話しかけると真っ青な顔をされ、ごめんなさいの言葉とともに突き飛ばされた。逃げようとする彼女の腕をとっさに掴んでしまう。

「痛…」

「…っ、ごめん……」


「ぁの………」

「そのっ俺たち、今出会ったばかりだけど……その、ちょっとだけ彼の話聞けないかなって…」

 そうだ。冷静に考えてみれば、キラにとって「アスラン」と出会うのは初めてのはずだった。


「……………」



「話すって、言っちゃったし……、ちゃんと、君のこと傷つけないようにするから……だから…」

 もう少し、同じ時間を共有していたい。そのはかない望みは、粉々にうち砕かれた。


「悪いんですけど、僕……男の人嫌いなんですッ」



 手が、離れた。


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*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:ドラマのような雰囲気も、前半まで(笑)
次回予告:アスランの勘違いとキラの勘違いは、レベルが違います。

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