34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第7話−

 アスランとキラにとって怒濤のような時間が過ぎた翌日。嵐は未だ去ってはいなかった。一見静かに見えたのも、授業中のみ。それ以外は、ずっと囲まれっぱなしだった。

 何故かと聞くのも愚かな話、結局というか、やはり僅差ではあったものの学年憧れの「潤沢な予算」を手に入れることが出来たからだった。おかげで朝から気を抜ける隙がない。



「でも、あんな内容の話で良かったんでしょうか?」

 さすがに不安になる。

 ソレというのも、先輩達の話を聞いていて、自分たちの用意した原稿がいかに無意味かを思い知らされたからであった。

 結局、持参したカンペを使うことなく、二人ともノリでその場を乗り切った。


「話なんて、誰も聞いてないのよv」

「そうそう。どうせ、学校のちょっとした仕事をするってだけの話なんだから」

「でもそのおかげで、私たちはこんなにいい目に合うことが出来るんだから、ホント感謝よねぇ〜」

 周囲の人たちの異常な機嫌の良さ。昨日の影響は早速今日の昼食メニューに表れたからだ。


(なんとまぁ…露骨な……)

 こんなシステムを容認している学校側にもかなりの問題があると思われた。

(……で、その理事長が母上なわけだ)


 たった一日のために精一杯を尽くし、頑張ったのだから周囲の人々が感謝するのは当たり前というわけだ。

(そりゃ…お金が絡めばやるだろうけどさ………)


 確かに「感謝」もする。1年間良い思いをする度に、昨日のことを思い出す。自然、学年会長・副会長に協力的になる。

(やり方が露骨なんですよ、母上……)


 昨晩、早速母を問いつめたが結局「楽しいから一石二鳥じゃないの」などとズレたことを言われ、サッサと諦めてきたところだった。





「ねぇアリス〜、放課後空いてる?打ち上げに行こうよ」

(この上更に囲まれろとでも言うのか!)

 今でさえ、男とバレやしまいかと充分気を張り通しなのに!


「ご…ゴメン、ほ…ほら、学年会の仕事とかあるし、それにちょっと疲れちゃったから…」

 嘘ではなかったが、正直一人になりたかった。


「そっか、仕方ないわね〜。じゃ、日をおいてやろうね!打ち上げパーティー」

 雰囲気というのは、非常に恐ろしいもので。断るすべはなかった。


「…はぃ」





 この日、放課後までは良かった。最後の授業が終わる頃、ざわざわと空気が騒ぎ出す。嫌な予感がしたアスランは速攻で、学年会室に直行し裏道を使って寮の部屋に戻った。


「くぉ…こんな……こんな生活を3年間も続けていけというのか父上は!」

 ここまでくるとまるで父が極悪非道の情け知らずに見えてきた。


 あ〜部屋のドアの前には鼻息の荒い男どもが群がってるんだろうな………。ゴソゴソという人の気配は不気味以外の何者でもなかった。

(しかし、ここで息を潜めているのもそれはそれでゴーモンだ…)

 しばらく考え、ドアの外の気配にウンザリし、そしてアスランは決断した。

「出る!」



 そして30分後、彼は紙袋を抱えてドアを開けたのだった。

「アリスさんっ」

「こないだは超可愛かったです!俺…実は……」

 そらきた!


「あっあのっ…私……ちょっとお買い物に行きたいのですけど……」

 声には充分すぎるくらいに気を遣う。

「じゃ、俺送りますっ」

「ぇっ!そんな…ちょっと、困ります……」


 ガマンだ俺!演技だ。演技の勉強をしてるとでも思え俺ぇ!



「でも、君みたいな可愛い女の子一人じゃ、危なくて心配だよ」

「ひ…一人じゃなきゃ買えないのっごめんなさいっ」

 言うなりダッシュでその場を去った。

 余談だが、俺がその部屋へ帰ったとき、ドア付近は血だらけになっていて、かなりホラーな光景だった。全部、アイツらの鼻血だった。





 そしてその日、アスランは小さな事件に遭遇したのであった。面倒くさいようだが、紙袋を持って電車に乗り、少し遠い街へ行った。平日の昼間で、更にひと気のないデパートのお手洗いで、アスランは仮面を脱ぐ。何食わぬ顔で着てきた服を入れた紙袋は、総合案内所のクロークに預けておいた。

「たまにはこういう気晴らしも出来ておかしくないはずだ」


 本当の姿は、まるで肩の荷が下りたように気楽だった。鏡を見ながら薄化粧を落とし、少し長めの髪をくくると別人の誕生だ。

「さぁて、気晴らし気晴らし」



 しばらくその近辺をぶらついていたが、とあるショウウィンドウにキラによく似たマネキンが飾ってあって、心にちくりと来るものがあった。

(俺はこうやって一人になれるけど、キラ…今頃どうしてるかな…)


 一旦気になると、いてもたってもいられなくなった。近くから様子をうかがうくらいならと思い、学校のある街へ帰ることにした。駅に着くと、なぜだか焦りに似た気持ちになり、早足で学校の寮を目指そうとしたまさにその時だった。



(ぁれ…)

 何だか見慣れたシルエットが、アスランの目に飛び込んできた。

「キラ?」


 間違いない。たった半月前に出会ったばかりだったが、ずっと一緒にいたキラだった。彼女の側に、もうひとり人の姿があった。何だかキラが絡まれているように見えた。アスランは一瞬自分の姿に戸惑い、しかしすぐに思い直してキラのいる方向へ自然と足が速まった。


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*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:やっと話が動いてきました。
次回予告:絡まれてる女の子を助ける…などという格好いい見せ所もこのサイトでは台無しですv

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