34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第6話−

 4月30日。アスランにとっては嫌な日だった。

 それは、例のミスコンの日。学年副会長の挨拶なんて、どうでも良かった。どうせ誰も聞いていないし、政治家じゃあるまいし公約を言う必要すらないからだ。更に嫌なことには、前日の夜から、緊急同居人が1名増えていることだった。



「ぅふふふふふふv」

「母上……その不気味な笑顔は何とかなりませんか…」

「なりませんわね」

「ならなくても何とかしてください」


「この日のためにわたくしがどれほど苦労したというのか。判らないあなたでもないでしょう?」

 判る判らないと言うレベルの話ではなかった。アスランこそが、嫌と言うほど体験してきたのだから。



「えぇええ〜っ!母上のせいで、お肌がつるつるですよ…」

「モチモチ卵肌だとおっしゃい」

「もともと白いのに更に美白までしてくれて…」

「あら?肌荒れは男といえども大敵!全身エステは当然の事よv」


「フツーしません…」

「四の五の言わないの。今のあなたは完全に女の子なんだから!大きな声で怒鳴ったら外に聞こえますよ」


「この恨み……絶対に忘れませんよ…」

「まぁ〜なんて事を言うのでしょうか?でもすぐにその減らず口を言えなくして差し上げますわ」

 レノアの瞳がきらりと光ったところで、ドアの外ががやがやとうるさくなってきた。ノックの音が聞こえる。知らず後ずさったアスランの代わりに、レノアが何の遠慮もなく「はいは〜い」と言いながらドアを開けた。

「あ…ッこら!母上ッ」



 顔だけふり向いて睨みすえるレノア。その表情が怖くてさすがに首をすくめた。


「アリスさん!キラは済んだの!あと、私たちの学生生活はあなたにかかっているのよ〜」

「金寄こせ金ぇ〜」


 それはもはや殺気だった。

(恐……ッ)


「アリス〜ドレスは着たのぉ?隠れてないで出ていらっしゃい」

「でも……母上…」

「出ていらっしゃい!恥ずかしがるような歳ではないでしょう」

 確かに…歳じゃない。しかし………納得出来るかと言われれば、即答出来る。

 納得出来ない!

 おずおずと首を差し出すとレノアを初め皆が、溜息をついていた。


「やっぱり思った通りね!」

「アイツを選べば間違いないと思ったんだよ」

「おっしゃぁ!今年の予算はいただきだぜ」



 アスランはレノアの側により、耳打ちする。

「母上…恐すぎますよ!どう見てもお金しか見えていないですよ!」

「伝統とはかくも恐ろしいものなのよv」


「俺…及第点取れなきゃ、こいつらに仕返しされる……」

「そう思うなら、頑張ることね〜。大丈夫、顔は綺麗なんだから、堂々としていればいいのよ」

 母の励ましが、正直アスランには嬉しくなかった。男なら、「格好いい」と言われたい。「綺麗だ」とか「可愛い」とか言われて、ちっとも嬉しくなかった。



「あの…お化粧、今からですよねっ」

「ええ、今からよ。私がやろうかと思っていたけれど、みなさんにお願い出来るかしら?」


(ヤメテ……ヤメテ下さい母上〜〜〜〜)

 そんなアスランの願いも虚しく、母は即答でOKを出してしまったのだった。


「ありがとうございますッ!頑張りますから、よろしければご助言いただければ嬉しいのですが!」

「ぅふふ。良いですわよ。公私混同かも知れないけれども、私の子供ですものv」

「ありがとうございます理事長!このご恩は一生忘れませんッ」



「………………………」

 しばらく、言葉にならなかった。



「あら?何を固まっているの?さ、ちゃんといすに座って!鏡を見ていなきゃ」

「母上……?」

 口にした言葉は、自分のものじゃない気がした。

「何でしょう?」


「母上はいつも忙しいはずじゃぁ、なかったんですか?」

「それが何か?」


「あちこち行かなきゃと、いつもおっしゃってましたよね?」

「ええそうよ。でも忙しいと漏らした覚えはありますけど、仕事をしてると言った覚えはありませんよ」

「母上、ウソはいけませんよ?」

 言葉が、だんだん乾いていくような気がした。


「まぁ、この子ったら母を嘘つき呼ばわりするの?嘘は言ってませんが、事実の全てを話した記憶もないだけです」

「今まで…隠してたんですね」

「あなたが聞かなかったから」


「親はあなたしかいないと、一心に信じ続けてきたのに…」

「ま!なんて事を言うんでしょう!今日はあなたのためにイロイロと小細工をして参りましたのに……」

 母は、心底哀しげに見えた。表面上は。この剛胆な母が、そんなことくらいでへこたれないことくらい良く知っている。



「公正な選挙とお聞きしましたが?」

「公明盛大な親心です」

「ソレ……字、違います」

 それを言うなら「公明正大」だ。

「はい、ちゃんと指摘出来ましたね。よろしい。ではマスカラを付けますから気を付けているのですよ」


「後でじっくりたっぷりお話を伺っても、良いですか?」

「どんとこいです」



 そして、この日とある学園に絶世の美女が二人生み出された。

「これが傾国の美女ってヤツだね」

「男が一目見たら、国が滅びちゃうくらい夢中になるって…あれでしょ?」

「そうそう!こりゃぁ明日っから告る人が殺到するぞぉ」


(ォエ”…ォエ”ェエエ〜〜〜〜〜)


 微笑の表情で隠した、アスランのソレが本音だった。


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*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:いつぞやの日記みたいな事に(笑)06年の年末だっけ?
次回予告:アスランには男達からの猛烈なラブアタックが!逃げたくなるのが人間ってもんです。

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