34567キリ番リクエスト
−第5話−
2日3日で、俺に脈がないと判ると、彼らは早速ターゲットをキラに切り替えたようだった。心の中で彼女に謝った。 たぶん、俺以上の鬱陶しさだろう。彼女の部屋をそっと覗きに行くと、やはりというかドアの前にまで学生達が群がっていて。あんまり行けるような雰囲気じゃなかったから、そっと引き返してきた。 後で電話でもして謝ろう。そう思い、挨拶があるまではどこへも行かず、部屋でじっと息を潜めていようと思った。たぶんそのほうが正解だ。ミスコンは………前の日に母にでも頼めばいい。そう思っていた。 「あら遅かったじゃないの。時間は1分1秒でも惜しいのよ、サッサとこちらへいらっしゃい」 アスランは、部屋のドアを開け、すぐにバタンと閉めた。 「み…見なかったことにしよう。ここには誰もいなかった、俺はここにいなかった」 「……事にはならないわねvア・ス・ラ…」 「わーっわ〜っわぁあッ!大きな声で言わないでくださいっ!入ります!入りますから」 そこには、さも当然のように母がいた。 「どうしてこんな大事なことを黙っていたのかしら?」 「言えるわけないでしょう!俺…男なのに、こんな……端から見れば変態以外の何者でもないじゃないですか!」 「似合っていれば別よ」 「そぉいう問題じゃないです。論点違いますから」 「論点が違うのはあなたのほう。どうして割り切れないの?潤沢な予算は学生生活に大きな潤いを与えるのよ?」 「………その話…どこから………」 するとレノアは声を高くして笑った。 「この私に判らないことなどあるとお思い?甘いわねアスラン。ここが誰の母校だとお思い?」 嫌な予感だ。そしてその予感は大抵…当たっている。 「ま…まさかッ」 「私とあの人の出会いは…甘酸っぱい桜もちの思い出とともにあるのよ」 ちょっと待って下さい。今、妙なことを聞いたような気がします。 「桜もち?」 「ええ!桜もちよ」 「桜もちが何の関係が?」 「まぁ!やっと聞いてくれるのね、私のあの人とのなれそめを…「結構です。俺、急いでいますから」 親の惚け話と年寄りの昔話地獄からはなかなか抜けられない。アスランの頭はそう瞬時に判断し…その場を抜け出そうとして、見事に床にひっくり返った。 「コイバナは勘弁して差し上げましょう。けれど、もう一つから逃げ切れるなんて思ってはいけませんよ」 ギク! 「あなたは4日後、誰もが羨む淑女になるのです。ザラ家の人間として手抜きは許しませんことよv」 「結構ですって!俺は……」 「潤沢な予算、優遇措置、尊敬の眼差し、そして絶大な権力…」 「………ぐっ」 「断ったらあなたに未来はありません」 「父上に………チクるのですか」 「まっ!どこでそんな汚い表現を覚えたのでしょう」 「わざとらしいこと言わないでください」 「では、当然協力しますね?」 「……………判りました」 そして俺は、散々母親のオモチャにされ、若い頃のドレスだとかたくさん試着させられ…あまつさえ逃亡防止のためという名目で写メをこれでもかと言うほど撮られた。 「ソレ…絶対に父上には見せないでくださいよっ」 「アスラン、私はあなたがとても賢くて素直な息子だと信じているわ」 「絶対ですよ!!!」 空恐ろしくて、何度も何度も念を押した。万が一、父にでも見られでもしたら今度こそ本当に人生が終わってしまう。それは予感などではなかった。 「また来ますよ」 (出来るだけ来ないでください…) 帰り際に、母にひと睨みされて背筋が凍る思いがした。担保さえ取られなければ今頃こんなに歯ぎしりをしなくて済んだだろうに。自分がふがいなく、あの母にやはり勝てなかった悔しさも相まって、その夜キラの部屋へ電話をかけた。 まぁ、電話といっても各部屋に設置してあるのだから部屋から部屋へは、内線と同じになるのだが。少し待って、切ろうかなと思ったときにキラは出てきた。意識して声のトーンを高くする。 「ごめん、電話鳴ってるのは判ってたんだけど、化粧落としてて…」 言われたセリフにドキッと来た。 (キラ…お化粧、してたんだ……) どんな感じになるんだろうと思った。しなくても充分可愛いのに。 「ぁ…えと……」 「仕方ないよね。僕も毎日もみくちゃにされて……」 聞きながらアスランは再度心の中でキラに謝る。きっと自分が追い出した人たちがそのままキラを囲む人たちの輪に加わっている。 「あ…ぅん」 「心配してくれたの?」 「う…ん。キラは…どうなのかな…って」 「どうって言われても、そのまんまだよ」 「疲れるよね」 「疲れるけど…みんなの気持ちも分からない訳じゃないし…」 「それは…」 「それにさ、もし教職員投票で1番になったら1年間食費タダとか、色々あるじゃん」 「うん…」 「たった4日だし、本当は僕だってそんな目立ちたくはないけど、それでみんなが喜ぶんだったらそれはきっと良いことなんだよ」 そういう考え方があるのか、とアスランは感心した。自分自身の感情だけで精一杯だった自分がやたら小さく見える。 他人のために何かをすることは、気持ちよさそうだと思った。 第6話へ→ *Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice* いいわけv:キラが、心のオアシスに見えます。そのほうがギャップが面白いからv←企んでいます(笑) 次回予告:最高権力者。 |
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