34567キリ番リクエスト
−第4話−
それは、この学園独特のシステムだという。確かに他にはないだろう。それは、 <学年会長および副会長の選挙> 「……………選挙?」 「う〜ん…というより、どっちかというと人気投票みたいなものね」 担任のラミアス先生はサラッと流す。何でもこの選挙、美人コンテストも兼ねているのだとか。 (ミスコン!!!?) 冗談ではなかった。これはもう、まかり間違っても選ばれるわけには行かない。 (1)投票期間は10日。学生一人に1日1票、すなわち最大10票が与えられる。投票権は行使してもしなくても構わない。分散投票も可能。 (2)立候補者、などというシステムはなく各学年全ての人物が対象。10日後、最大得票者数を得た者を学年会長、その次に多かったものを副会長とする。 (3)会長、副会長にはそれなりの仕事をしてもらう代わりに、利益も多い。学食1年間無料パスや、授業料半額免除など多数。 アスランは思った。学費うんぬんなどどうでもいい。問題はミスコンだ。大体が女装なのだから、ミスコンなど出来ようはずがないのだ。 かくして、その日からアスランのできるだけ目立たないように大作戦が敢行され……………たにも関わらず、非常に不本意な結果になったのだった。 「俺にはミスコンなんて無理です!」 息子は泣きながら親に電話する。普通、親に泣き付く話と言えば、「お金が足りない」とか、「車が欲しい」とかだろう。だが、アスランの場合は違った。 「父上の権力で何とかなりませんか」 彼は、初めて我が父を頼った。しかし、世間の風は彼に厳しかった。 「無理だと思うわよ〜」 「何故聞きもしないのに即答するんですか母上」 「あなたの話が、あの人に通用すると思う?今でもあなたの入学式の写真をパスケースに入れ、引き延ばして額に入れ、ポスターに打ち直して毎日悦に入ってるのよ?」 「………………………」 想像の範囲だ。しかし、想像したくないことは世の中にはごまんとある。 「その顔と言ったら、私でも見てられなくて、にやけるなら自室でなさいといって追い出してる程よ」 「………………」 ある意味、全寮制の学園でよかったのかも知れなかった。こんな姿を間近に見ることはないのだから。 「アスラン。お前も男なら腹をくくりなさい」 「母上、それ腹をくくるとか腰をすえるとか、そういう表現以前の話です!」 「私の実力を甘く見るものではなくってよ。ぅふふvあなたを完ッ璧なレディに仕立ててみせるわ」 「母上まで感化されてるんですかーーッ!」 「バカおっしゃい!私はあなたの今後のために、精一杯男とバレないように協力するって言ってるんじゃないの!」 「母上……」 「良いこと?重要なのはファッションです!見えそ〜〜〜で見えないチラリズム!これこそがジャパニーズ・エロティシズム!平たく言えば萌え!!」 「………。正々堂々と言えば良いってもんじゃありません!」 「私の言うことを聞かなければ、その姿の写メをあの人に転送するわよ!」 そして、アスランは母親に屈した。たった1日、当選の挨拶さえ乗り切れればノープロブレムなのだ。それさえ過ぎれば後は制服ライフ。肌の露出があったとしてもせいぜい体育着。それもこの学園は、体育着の上にジャージを着用しても良いのだ。 (無論俺はジャージ着用派だ) ない胸は詰め物でごまかせる。背に腹は代えられなかった。1週間後、アスランは学年副会長として、就任の挨拶が決まっていた。 普通に制服姿で挨拶すればいいのに、なぜだかドレス着用フルメイクで登場しなければならない。それが伝統だとか、そういったくだらない理由で。 ちなみに教職員に質してみたところ、もちろん「伝統だから」の答えが多かった。約一名、「楽しいし?目の保養になるからい〜じゃないのv」という教職員がいた。フラガ先生かと思い、声のしたほうを睨みつけると、彼ではなく。 「君が1年の学年副会長さん?よろしっくvオレ、世界史のハイネ・ヴェステンフルス」 などという、いかにもお気楽な教師と出会った。 「そういうの…苦手なんです」 「苦手っても、いつまでも逃げるわけには行かないだろ?それはそれ、コレはコレ!伝統は伝統。ドンドン挑戦していかないと、人間大きくなれないよ?」 所詮、現実を知らない人間から見ると、ただの逃げに過ぎなかった。 「判りましたっ。やれば良いんでしょうやれば!」 「そぉそ〜お!それで良いんです。素直なことは良いことだよ?ほらほら、怒ってちゃ折角の美人さんが台無しだ〜」 「……………」 (褒められても、嬉しくなんかない!俺は…俺は!俺はッ男なんだってば〜〜〜ッ!!!) アスランの声にならない叫びは、誰一人の耳にも入らなかった。 そしてすぐに学園内でもみくちゃにされることになった。後から後からついてくる人たち。休み時間になると必ずと言っていいほど囲まれる。彼らおよび彼女らは、俺たちをどう飾ろうかで取り合いになっているのだった。ちらりと前を見ると、やはり会長に選ばれたキラも困惑顔だった。 「ドレスは何を着られますの?」 「それとも水着にします?」 「メイクになら自信があるの」 「お金は俺が出すからさ」 「親がエステやってるんだ。今日から通わないかい?」 エトセトラ。 何故彼らがこんなにも熱心なのかというと、それにはちゃんとした理由がある。各学年毎に学年会長と副会長がいる。学年毎の会長・副会長挨拶はミスコンも兼ねていて、それに投票するのは教職員なんだとか。 そして一番得票数の多かった学年に多くの予算が割り当てられるシステムになっていた。気持ちは解るが………正直いい加減にして欲しかった。 第5話へ→ *Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice* いいわけv:株式の権利分散行使みたいです。この選挙(笑) 次回予告:アスランは母親のオモチャでもあるのです。 |
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