34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第22話−

 翌朝のアスランはどこかげっそりしていた。キラだけでなく他の級友達もさすがに心配する。聞かれる度に手をヒラヒラ振って大丈夫と答えるが、それどころではなかった。


(疲れた………)

 こんな格好をしていても、男のサガはなくならないから。キラからの内線も無視し、夕飯も取らずに苦悶し続けた。

 キラが、あんな格好で積極的に迫りさえしなければ、もう少し余裕でいられたのかも知れない。だが、既にアスランはキラの瞳に魅入られていた。



「ねぇ〜アリスぅう〜〜〜。どう見ても大丈夫そうには見えないよ?さっきもぼおっとしてたし」

「へ?あ、大丈夫だよぉ。ほら、昨日と今朝と何も食べてないから…その、お腹空いちゃって………」

「今日ギリギリだったもんね」

「寝坊してましたから…」


「まさかとは思うけど、僕のためにダイエットとかしてくれてる、とか言うんじゃないよね?」

 アスランはきょとんとし、そして笑って見せた。

「本気でそんなことしてるように見える?」

「全然!」

「だから、お腹空いてるんだって。ね?お昼と、ちゃんと夕ご飯食べれば元に戻るからっ」


「………信じてもいい?」

「100%」

 キラは約束だよ、とか言って笑って見せた。



(さすがにイカン。キラに必要上に顔を近づけさせないようにさせなければ………)

 潮時なのかも知れなかった。アリスがキラの前から引いていって、アスランが近づく。男のアスランなら、キラを見て真っ赤になっても、手を繋いでも不自然じゃない。といっても、しょっちゅう自宅に帰ってはあからさまに不自然なので、他にも作戦を練る必要があった。



(こう毎日欲求不満じゃ、さすがに鼻血吹いて倒れそう………)

 アスラン個人の事情で、キラとの交際を急がねばならない理由があった。





 …でもって、部屋のカレンダーが何枚かビリビリと破られていった頃、作戦はほぼ8割方完成していた。

「アリスぅ〜」

 キラから内線がかかってくる。


「僕、お昼前から出かけてくるけど、いい?」

「いいよ、行ってらっしゃい」

「一人で寂しくない?」

「寂しくなったら友達呼ぶから心配しないで」

「性別は………」

「大人数v」

 大人数、でなければどっちにしたってキラは嫉妬するのだった。



 通話を終え、内線を切る。窓からキラが出かけたことを確認してから、アスランはそっと裏口から抜けていった。そしていつものようにどこかの店で変身する。アリスからアスランになったときだけ、安堵のため息が漏れた。

「さすがに、もう少しの間だけだろうなぁ…」

 しみじみ、そう思う。

 体つきも成長したし、声もかなり低くなってしまった。卒業までは何とかごまかすとしても、その後は完全に保たない。少年ではいられなくなってしまうから。





 そして約束の時間にキラと落ち合う。その為に、わざわざ場所を設定してあった。それから先は、別に何と言うこともない普通のデートで。

 でも、普段が普段だけにアスランは「普通のデート」というものに感慨深いものを感じる。ここではもう、自分を偽る必要もないわけだから。



「……………でね、アスラン………って、聞・い・て・る?」

 ほっぺたがつねりあげられて、ヒリヒリした。

「ぇあっ、あ…聞いてるよ」

「僕以外のこと考えてたでしょ…」

 キラはつまらなそうにふて腐れる。


「………。ごめん…ちょっとだけ、親のこととか………」

 などとアスランが言いだしたので、自宅の話になった。

「そう言えばよく美味しいとこ連れてってくれるけど、大丈夫なの?バイト掛け持ちとかしてムリしてない?」

「してないよ。ちょっとだけ、実家の手伝い」

「何ソレ〜〜〜?じゃ、ちょっとした重役さんとか?いわゆる2階の自宅からスーツ着て1階に下りるとか……?」


 固まるどころか、びくりと震えたアスランをキラは不審そうに眺めていた。



「ね、アスラン。今ここに素直に白状する、と、しらばっくれる、って言う二つの選択肢があるんだけどぉ〜」

 妙に鋭いキラの表情が恐かった。


「………何でも、話します…」

「ピンポ〜ン!ピンポン、ピンポン、大正解〜〜〜v」

 アスランはおもむろに咳払いした。さすがにここに来ても、言えることと言えないことがある。

「あまり言いたくはなかったんだけど、一応父親は国防省長官やってる」


「……………………え”………」

 今度はキラが驚く番だった。



「何でこんなおばかに長官やらせてるかな、この国軽くやばいんじゃないと子供の立場からは思うけど、あんなんでもまともに仕事してるみたいだし………」

 アスランの話はキラはほとんど耳に入っていなかった。頭は国防省長官でフリーズしている。


「……うそ…」

 真っ青な表情でキラは引き始める。そのキラの腕をグッドタイミングでつかむことに成功した。

「残念ながら。キラは、ああいうのは嫌い?」

「だって…そんなこと知らなくて。アスラン全然そんな風には見えなくて………だから…」

「最初から言ったらキラは俺とは付き合ってくれなかっただろ?」


 悔しいけれど、本当のことだった。きっとキラは電話で誘われても、校門の前で待たれても逃げていたに違いない。



「僕なんかよりも、もっときれいで素敵で頭のいい人とか、周りにいっぱいいると思います」

「それは困ったなぁ。俺はキラしか好きになれないのに…」

 寮とは違う、初めて目の前の自分を意識して真っ赤になったキラを見ることが出来た。


「家とか全く関係なかったら、個人としての俺は、好き?」

 答えは声にならなくて、うなずいた頭を確認した。


第23話へ→
*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:アスランギリギリ大ピンチ!のほうが断然面白いんです(苦笑)
次回予告:アスvキラ!次回で最終回になります。あとひといき〜。

お読み頂きありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さいv