34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第20話−

 その後、父親の恨みがましい視線に耐えながら(どうやら日曜日に色々画策していたらしいが、その計画はアスランがフケたことでおじゃんになったのを根に持っているようだ)アスランは長官の仕事を手伝った。

 その間、機を見てキラと2、3度メールを交わす。自宅にいる間、キラともう一度会ったりなんかもした。やっぱりまだキラの腰は重かったけれど。結局キラはメールの相手があのアリスだと気づいていないようだった。





 1週間というものは案外短いもので、すぐに学園に帰る日はやって来た。

「とりあえず、帰ったらすぐにキラの愚痴だ!」

 もう判っていることを確認しつつアスランは、寮に戻り…そして間違いなくキラの愚痴を聞かされた。内容はほぼ予想通りで。そしてキラの気持ちが変わりつつあることも範囲内で。


 後はいかに「アスラン」と「アリス」を使い分けるかの問題だった。寮の内線通話は「アリス」で、携帯電話とメールは「アスラン」と言うふうに。キラは別人だと思っているから、携帯電話と内線が同時にかかることはない。そんなことは最初から計算済みだった。





 そしてアスランからキラへのアプローチが増えるとともに、キラからアリスへのモーションが最初ほどの情熱を見せなくなっていく頃。季節は3回目の春を迎えていた。

「……ふふふっ!あと1年……あと1年…」

 アスランの呟きに周囲の級友達が反応する。

「そうよ!あと1年しかないんだからッ。今度こそ優勝してもらうわよ!」



 そう。例の季節がまた巡ってきたことを意味するのだった。潤った予算と境遇に血眼になる人々。彼女らに囲まれてアスランは例年以上に、ハッキリ言って餌食になっていた。

「……ぁ………」

「しゃ・べ・ら・な・い!笑わない!」


 今、ただでさえ白い顔に更にパックを塗られ、アスランは動くことすら出来なかった。

「これ、高かったんだから!」

「はぁ〜〜〜〜〜〜〜ぃ」

 小さな声で頷く。きっとキラはこれ以上の目にあっているんだろうなと簡単に予測ができた。何せ去年は風邪でダウンしていたのだから。

 でもって今年は最終学年。気合いの入れようが違う。そんなことをうっすらと感じていた。





 そして1ヶ月後、再びあの豪華な部屋への引越権を得たのであった。無論、級友達のフィーバーぶりもしばら〜く続いたことは言うまでもない。その日、アスランはキラの部屋へ遊びに行っていた。まぁ、実際はキラの課題の手伝いではあったが。

「今年はよかったね。風邪引かなくて」

「うんっ。アリスの最高に綺麗な姿見られて幸せっ」

「キラのほうがずっとずっと可愛かったよ?みんなもそう言ってたじゃない、人気者さん」


「僕はっ別に、アリスにだけ人気があればいいもん」

「強がり言わないの!」

 キラはムキになって反駁する。ちょっとからかっただけなのに。


「だって…毎日毎日大変だもん……」



 彼女の真剣な眼差しに、さすがに思い当たる節はある。授業中はちらちら見られ、休み時間になると告白組に囲まれ、そしてどこにでも入っているラブレター、更には会長副会長の仕事中密かに写メを撮られていることを知らないわけではない。

「ま〜〜最後だからね。こういうお祭り騒ぎも」

「来年からはみんなちりぢりになっちゃうのに…」

「だからじゃないの?キラ可愛いからね〜〜。今のうちに彼女にって本気で狙ってる子とか、結構いっぱいいるよ?」

「アリスに褒められるのは嬉しいけどっ正直鬱陶しいの!毎日毎日っ」



「キラぁ」

「そりゃアリスに可愛いって思われてるのは、すっごいうれしい。僕のことちょっとは意識してくれてるのかなーって…」

 上目づかいになってくるキラの頭を軽くたしなめるようにぽかっと叩いた。

「キ・ラ・ぁ〜〜〜?」

「ん?何?」


「キラ、気づいてる?キラには男の影あるでしょ?」



 言ったのはわざとだった。

「ぇ?何で知って………ぁッ」

 キラは慌てて両手で口元を押さえる。だが、時既に遅いとはこのことだった。


「……………」

「………アリス?」



 キラから冷や汗がたらたら落ちる。

「…というか、ホントだったの?」

「………へ?」

「冗談のつもりだったのに…」

 このセリフもわざとだった。アスランは慎重に気をつけながら、言葉を選んでキラを誘導する。

 正念場だった。



「冗談……………て…」

 ここでアスランはニヤリとした表情を見せる。

「ホント………なんだ?」


「ぁっえっいや……これは、その…事情があるって言うか、彼とは偶然出会ったって言うか…とにかく恋人とか〜〜〜全然そーいうんじゃないんだからねっ」

 キラがおたおたしている。焦りまわして自分から全てをバラしていることにも気づいていないようだった。

 キラが焦れば焦るほど、アスランは意味ありげにニヤニヤしていた。その余裕がキラを更に混乱させていった。こんな時に失礼ながら、アスランは別の感情でキラを見ていた。

(必死になっちゃって。キラ…可愛いな)

 思わずくすくすとほほえみが漏れる。


「わっ笑わないでよぉっ。もぉ、なんでそういうとこだけ僕のこと見てるのッ」

「見てないよ。今のは、本当に単なる冗談のつもりだったんだけどぉ?」

「う゛……」


「キラが?早とちりして?本当のことを次から次へと話してくれたから?」

「アリス…アリスの意地悪っ」

「キラの無二の親友として、素直〜〜〜に喜んでいるんだけど?」


「…ぇ?」



「彼は、格好いい人?」

 長い時間をアスランは待った。そしてキラはいささか顔を赤らめながら、微かな声で肯定した。



「優しい人」


「キラ、大好きだよ!」


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*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:女の子とお付き合いするのに、誘導尋問じみたコトしなきゃならないなんて、なんて苦労性なんでしょう。でも、天真爛漫なキラと苦労性アスランの組み合わせは好きですよv
次回予告:アスラン、種割れ(笑)

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