34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第2話−

 先ほど声をかけてもらった職員も同じ場所に行くということで、一緒に走ることになった。


「実はさぁ、俺も寝坊しちゃったんだよね〜」

「寝坊!?威張れることじゃないでしょ…」

「……キミもね」


「それは〜…その、色々あって………」

「んん〜まぁ、良いんだけどね。キミのような思春期真っ盛りの女の子は、おおいに悩みなさい」


「……………」



 どうも…周囲から見ると違和感がないらしい。アスランは非常に複雑な気分だった。

 男として生まれた限りには、どうしても「格好いい」と見られたい。


 しかし現実にはこの有様。確かにコーディネイターではあるが、遺伝子の組み換えは万能ではない。所詮は親の持つ遺伝子の中から取捨選択して、子供は産まれてくる。いくら頑張ったところで、人種とか血液型とか言ったものはある程度限定されてくる。



 そりゃぁ、小さい頃は「可愛い」「可愛い」と言われたよ。

 あんのクソ親父のせいで髪を伸ばし、リボンで飾られた俺はさぞかし「可愛」かっただろうよ?全く!物事の善悪も、そして抵抗ひとつできないことを良いことに、散々人を玩んでくれたさ。

 だから未だに、俺の幼少の頃の写真は、到底他人に見せられるものじゃぁない。七五三だって三歳と七歳の時以外写真を撮っていない。いくら小さかったからって、振り袖はないだろう!振り袖は!しかも何が嬉しかったんだか、数種類作ってたことが写真で判明した。

 全く、事ここまで至れば腹が立つなどという次元を通り越していた。





「大丈夫か?もう少し頑張って走れ」

 その職員、どうやら英語担当のフラガ先生が俺の手を取ってきた。ああ〜言葉にして表現できないから、心の中で思いっきり叫ばせてくれ。


(キモ〜ッ!!!)

 女の子だと思われている。完全に。

 仕方ないから、先生の前では精一杯女の子としてふるまうしかなかった。少し遅れ気味に走り、「待って下さい」とか可愛らしく喋って見せたよ。



「もぅ焦れったいなぁ。オジサンが抱っこしてあげようか」

 よく、額に青い線が走るというが、まさにそんな気分だった。

「結構ぉですッ」


「お姫様抱っこは、男のロマンなんだぜぇ〜〜」

 要りません!というか、俺も男なんでお姫様抱っことかされたくないです。そしてこの状況は男のロマンとか、そういう以前の話です!


「一人で走れますっ」

「ちぇ〜。最近の子はガードが堅いな〜」

 ……………。ガードも堅くなるって言うもんです。とあるアホのせいで俺はこれから3年間性別を騙し続けなきゃならなくなったんですから!



「先生ぇっあと1分ですっ」

「それ俺のセリフ〜」

「寝坊で遅刻した先生に言われたかないです」

 フラガ先生は、都合の悪い部分だけをスルーしてラストスパートをかけた。


「おっしゃぁ、滑り込むぜぇ〜〜〜ッ」

「はぃッ!!!」





 結局…始業式には約2分遅刻した。しかし、フラガ先生の計らいで、何とか裏口からコッソリ入れてもらえ………更には席順がABC順だったこともあり、ほとんどの人の目に触れることもなかったのは幸いだった。

「はァ…はぁっ……先生、すみません。ありが…とう、ございました…」

「どういたしまして。じゃ、今度ランチでも付き合ってくれる?」


「……………。固く遠慮させていただきます」

「あ〜ぁ、最近の子はなんてしっかりした子ばかりなんだ。オジサンは哀しいねぇ」

 などと呟いたところで、他の教職員に見つかったらしく、早速連行されてコッテリ絞られている姿が視認できた。



 安心すると、視線を感じた。無理はない。初日から遅れてやって来たのだ。隣に座っていた栗色の髪の女の子(…だよね?)が、さっきからずっと見ていた。

「あ…っごめんなさい…」

「いや、いいよ。遅れてきたのお………私のほうだし。仕方ないよね」


 危ない危ない!あやうくいつものクセが出るところだった。さすがに”俺”はやばい。



「昨日、ちゃんと眠れなかったの?」

 彼女が小声で話しかけてくる。確かに、学校長の挨拶なんてどこもありきたりだから、まじめに聞いている学生などいないだろう。

「ま…ぁ、あ、いや…ちゃんと起きたんだけど……その、考え事してて〜…」


「…?」

「桜の花を見てたら遅くなった………」

 照れを隠しながらそう言うと、彼女はふわっと微笑んだ。自分と同じ13歳の…人種のせいだろうまだあどけなさの残る彼女のほほえみに、少しだけ心が躍る自分を感じていた。


 つぃと彼女が手を伸ばしてくる。ついでに顔も近づいてきた。場違いなドキドキ感と、何ごとだろうかという不安がない交ぜになる。


「そうだろうね。桜、ついてるよ」

 そう言って彼女はアスランの頭に手を伸ばし、頭髪についた桜の花びらを1枚1枚丁寧に取ってくれた。


「……ごめん」

「折角遅刻を誤魔化せたのに、このまま教室に入ったらまた注目を浴びちゃうよ、桜子さん」

 意地悪な言いように、アスランはいささかムッとする。でも、よく考えたらそれは彼女なりの気遣いで。



「桜子じゃ………ないんですけど…」

「じゃ?僕は君をどう呼べばいいの?」


 びっくりした。

「君………もしかして、男の………子?」


「あんなのと一緒にしないで!残念ながら正真正銘の女の子です」

「そう…なの?」



 初めて知った。一人称が「僕」という女の子。でも、彼女の場合特にこれと言って違和感は感じなかった。

「ごめんね。僕にも色々あって。気を悪くしたなら謝るよ、えーと……」


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*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:キリリクで素敵な設定を頂いたので、3話くらいまでは完全コラボレーションですv
次回予告:学校か?家庭か?アスランの選択肢。

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