34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第19話−

 肝心なのはきっかけであって、きっかけさえつかめば後は行動力と度胸で何とかなるものだった。街中で人気の少ない場所…例えばデパートの屋上のスペースに二人はいた。

 キラは気まずそうな視線を時々アスランに向けている。


「まだ男はみんなホモに見える?」

「そんなことは…ないと、思い……たいですけど…。ごめんなさい、僕もう帰ってもいいですか?」

 今アスランはいつもの「アリス」ではなく、本来のアスランとしてキラの前に立っていた。彼女にとって「アスラン」は一度だけ会ったことがある人。



「あの後シン君に会ったよ」

「………ぇ”…」

 キラの顔が青ざめ、そして引く。逃げようとする彼女の手をとっさにつかんで、引き戻した。

「偶然バッタリって言うヤツだよ。ほら、こんな狭い地域にいるんだし、そういうこともあるだろう?」

「………でも…」


「ちなみに俺はノンケなんですが…」

「でもっ。でもでもっ2丁目系の人って…ちょっと格好良かったらすぐ手を出すって………」



 全く。思い込んでいる人を変えるというのは難しいものだ。出来るのは方向性…ベクトルの変更くらいのものだ。

「信じられない?」

「悪いけど…まだ、ちょっと自信なくて……」

 キラの言葉から、彼女の気持ちが揺れ始めているのが判る。


「と言うことは俺は格好いい部類に入ってるってこと?うぬぼれてもいいんだ?」

 彼女の頬に赤みが差す。一時期はちゃんとシンを付きあえてたのだ。口で言うほど根本から男が嫌いというわけではない。



 顔を少し近づけると、キラの対応がしどろもどろになる。

「………う゛……」

「彼から少し話を聞いてる。彼の話を少しだけ聞く気にはなれないかな?」

「どうして、どうしてあなたがそんなことするんですっ」

「きみのは、どうやら勘違いみたいなんだ。彼から直接聞くのが辛くても、俺からなら構わないだろう?そしたら、きみも前に進めるかも知れない」

 そういうとキラは少し怒ったようにふて腐れた。

「きみきみって言わないでよ!ちゃんと名前…あるんだから……」



「俺が呼んでもいいんだ?キラ………って」


 ボッ!シュウシュウ〜〜〜。

 何だか水蒸気があがって、真っ赤な顔をしたキラはその場にぺたんと座り込んだ。完全に力が抜けているようだった。


「ほら、立って」

「ムリぃ〜っ」

「少し長い話になるから、そこのベンチに座ろう」

「力…抜けちゃって………」

「俺がキラの手を取ってもいい?」


 キラは少し固まり、小さな声で嫌だと言った。





 10メートルほど離れているベンチに座り直し、アスランは彼女にシンからの話をかいつまんで伝える。シンから聞いたことをそのままに。そしてなるべくシンの立場を悪くしないように。


「シン…」

 話半分で茶々を食っていたキラだったが、最後にはちゃんと聞いていて。そして涙があふれて止まらなくなった。

「会えないよ…もう、シンに会えないよ………」

 ぼろぼろと泣く彼女は本当に、たった一人のか弱い女の子で。アスランは柄にもなくドキリとする。



「キラの心が落ち着いて、また会うことがあったら、その時そっと謝ればいいと思うよ」

「アスランさん……。ごめんなさい、関係ないのに…こんなに、泣くなんて……」

「泣きたいときにちゃんと泣かなきゃダメ!俺は?もう恐くない?」


「…たぶん…」

「気持ちが落ち着くまで、手を握っていていい?」

 しばらく泣いて、キラは何も言えずに頷いた。彼女の返事を受けて、アスランは彼女の細い指をした手を握る。そうすると更に激しくキラは泣いた。



(そう。後悔も…ちゃんとしなきゃダメだよキラ)

 朝な夕なに見慣れた彼女の手を、さも初めてであったかのようにそっと握る。その上に、彼女の涙がぽろぽろぽろぽろ落ちて気持ちごと引きずられそうになった。

(やばいな……キラ、可愛い………かも)

 いつも危機一髪で、バレないようにと気をピンと張っているいつもからは到底感じられない感情だった。



 長い時間をゆっくりとかけて、彼女の涙が涸れたとき、泣きはらした目にアスランの心がちょっとだけ心が痛んだ。

「目…真っ赤になっちゃったね」

「ごめんなさい…」

「もう少し、ここにいようか」

「大丈夫です」

「ごめんね俺の都合で。このまま外に出ると、俺がきみを泣かせたと勘違いされちゃうから」


 説明するとやっとキラは気づいてくれたようで、あ……と小さく声を上げた。そしてそのまま、少しだけ世間話をしていたがそれもとぎれがちになり、キラの涙目が元に戻る頃には二人とも黙って景色を見つめていた。



「遅くなってごめんね。家族が、心配するね」

 判ってはいたが、敢えて知らないフリをする。ここにいるのはアリスではなく素のアスラン・ザラなのだから。

「ううん、いいの。学校…全寮制だから」

「そうなんだ」



 判ってはいたが門限の話も聞き、キラにケーキを一切れおみやげに買ってあげた。

「なんか、ごめんなさい。話聞いてもらって、ケーキまでもらって」

「いいんだよ。俺も…以前にキラに出会って、その後シンから話を聞いて、もやもやしてたことが晴れたから。今回はお互い様ってことで」

「そうですね」

 キラは、少しだけ微笑んだように見えた。



「ねぇキラ、メールとか出来ないかな?」

「メール…ですか?」

「せっかくだから、メールとかから始めない?目指せ男性不信完全克服代作戦。俺を練習台にしていいからさ」


 キラはきょとんとし、そして笑った。

「大丈夫だよぉっ!まだ信じてないんですか?」

「信じたい……けど…」


 そしてアスランはキラから携帯番号とメルアドを教えてもらった。


第20話へ→
*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:実はここがアスランの初恋です(遅)
次回予告:何だかこのペースで行ったら大長編になりそうなので、早送り3倍速(汗)

お読み頂きありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さいv