34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第18話−

「貞操?まぁ、曲がりなりにも男なら童貞はサクッと捨てたいお年頃でしょう?」

「上品な雰囲気して下品なこと言わないでください」

「家風は違っても、結局やることは一緒よ」


「スミマセン母上、お言葉と雰囲気とインテリアが非常にミスマッチなんですが!」

 アスランがいくらたしなめてもこの母…いや両親の素行が改まるわけではなかった。


「お前はレノアに似て美人だからなぁ。一体何人の男に告白されたんだ?」

 父親の言うこともあからさまにオカシイ。

「父上は黙っていてください!話がややこしくなります」



「相手はどのような女性なの?」

「友人ですが…事情があって男性不信だと勘違いしているようなんです。その誤解を解かないと、女装生活はいずれはバレます」


 母は神妙そうな表情をした。

「彼女とはもう、一緒に寝たりしたのかしらv」

 真剣な表情のまま、この母親はトンチンカンなところで場に爆弾を落とす。

「す・る・わ・け、ないでしょう!!逃げるのに必死なのに!」

「まぁ、そんなとこだと思ったけど。だから彼女の誤解を解いて身の危険から解放されたい…と。そういうわけですね」

 確かに勘はいいのだが。

「早い話が」



「彼女の部屋に乗り込んでいって、モノにすればいいじゃないの」

 やっぱり爆弾は落とされる。

「それができれば苦労してませんっ!」

 などというちょっとしたすったもんだがあり。その間に黙れと言われようが父親が容赦なく話しに介入し、混乱し。結論に至ったのは、夕飯を食べ終わってからだった。





「仕方ありませんね。では私もあなたの企みに乗りましょう」

「物騒な表現しないでください」

「要するに機を見てあなたをここに泊まらせるようにすればいいわけですね?」

「早い話が、そうです」


 アスランはホッとして、母親に感謝の言葉を言おうとし、またもや父親の横やりにあった。

 曰く<その間は女の子な可愛らしい姿を私に見せておくれv>



「何バカなこと言ってるんですか父上ッ」

「親の夢なのだ」

「白昼夢もいい加減にしてください」


「心配するな!今は手術の技術も進歩している」

 つまり…ちょん切りたいらしい。



「あなたは実の息子にそこまでして何が楽しいんですか!」

「親から自立したければ、明日にでも早速彼女を口説きに行くことね」

 母はそういうが、これは既に自立とかそういうレベルではない。


 レノア・ザラ………彼女が一番大きな壁かも知れなかった。

「ソウサセテ頂キマス」



 がっくりうなだれて、その日父親のご機嫌取りに付き合わされた。何って?

「ネグリジェv」

 今はほとんど見ることもなくなった、女性用のひとつなぎのナイトウェア。その写真を嬉々として撮らされた。

「ほら、優しく微笑んでv」

「でーきーるーかぁあああッ!!!!!」

「これも人生経験よ。役作りに専念なさい、アスラン」


「クソ親父の趣味に付き合うことのどこが人生修行なんです!」

「人生には嫌なことも付き物よ」

「忍耐力を養うことは、女装変態撮影会でなくても出来るはずだ〜〜〜っ」



「ほぉら〜アリスちゃぁ〜ん」

「その名前で呼ぶんじゃないっ!気持ち悪い!!!」


 やっと解放されたのは午後11時を過ぎてからの話だった。それで安心というわけではないのではあるが。

 なぜならば、散々撮られた女装写真のデータはあの父が握っているのである。



「弱みを握られてるような気がするのは俺だけですか?」

 アスランは半泣きになりながら母に抗議する。

「個人の趣味ですからねぇ」

「そー言う問題じゃないです」

「個人の範囲内に収まってくれればいいのだけど、はみ出るようなら容赦なく私が天誅を食らわせるから大丈夫よv」


「………。何だか結構綱渡りですよね?いつも!」

「今思えばあの人に出会ったときも綱渡りだったわ」

 レノアはあさっての方角を向いて回想する。すぐに嫌な予兆を感じ取ったアスランは慌てて止めた。

「昔話はまた今度お聞きします」

「ま〜〜〜残念ねぇ〜〜」



 自分はどうしてこんな両親の元に生まれてきたのだろうか?それが物心ついた頃からのアスラン少年の真摯な悩みであった。

「とにかく、明日は朝から出かけますから」

「そうした方が賢明ね。日曜日で一日中いるとなると、どうせ妄想しかしないでしょうから」


「家に帰ってきてまで父のモルモットはごめんです」

「どちらかと言えば格好の餌食?」

「母上!それフォローになってませんっ」



 言い捨てるようにしてアスランは自室に戻る。でないとこの母との会話も下手をしたら一晩中続いてしまう。小さい頃はよく父の愚痴を延々と聞かされたものだった。それはアスランがまだ幼く、純真で、でもって母に力で対抗出来なかった頃の話だ。





「と…とにかくキラの大体の行動パターンは判っている。後はタイミングだけだ」

 本当は家出のひとつもしたいが、この親では心配すらしてくれない。

 帰ってくるのが女の子ならよかったのに、などという見当違いのため息と、あら帰ってきたの?などという剛胆な一言がかけられるだけだからだ。



(俺に出来るのは一人の時間を満喫するくらいなんだ…)

 アスラン・ザラ(♂)は結構精神的に恵まれない青春時代の真っ最中だった。


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*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:レノアさんは大物中の大物です(笑)
次回予告:アスラン(♂)がキラにモーションv

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