34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第17話−

 それから少し校内はバタバタした。今年はキラの風邪で、ミスコンで優勝出来なかったものだから、まずお引っ越しからだった。今までいた豪華な部屋から一般の学生寮に移る。とは言え、家具などは備え付けがほとんどなので、そんなに大して荷物があるわけじゃない。1日かけて引越を済ませ、以前よりは狭い部屋で疲れからかぐっすり寝た。



(なんというか…こういうときは母上に感謝だな〜)

 当然キラもぐっすりお休みだ。ということは回復するまでアスランへのモーションは来ない。


「とりあえずしばらくは俺の貞操も死守…と」

 しかしいつまでもこのままというわけにはいかない。さすがに次の打つ手を考えなければ、キラのモーションはどんどん遠慮がなくなってゆくのは目に見えていた。

「あと…考えられる策は………忍法変わり身の術…コレしかないな」

 そう…結論づいた。

 無論、自分のためキラのため。アスランはこんなところでのんびりなどしてはいられない。突っ走るしかないのだ。



「最初は、時間をおかなきゃいけないから………卒業時から逆算してぇ………」

 入念に計画を練る必要があった。今の自分を、キラにとって思い出に変えるため。


「ふふ…ふふふふふっ!計画さえ成功すればこの屈辱ともおさらばッ!毎日の小顔メイクも、裏声の練習も、そしてむだ毛処理からも卒業だァアアアアッv」

 2年生になった4月のうららかな午後、アスランは誰もいない自室で不気味に微笑んでいた。





 そうして無駄に時は過ぎ、アスランの計画は初期段階を迎える。

「どぉぉお〜〜〜しても、帰るの?」

「仕方ないよ。親に呼ばれてるわけだし…」


 呼ばれてるというか………実際はごり押しだった。今回はさすがに事前に寮の管理人にも伝えてあるので、無断外泊を責められることはない。

「お見合いでしょッ!」

「またそういうことを言う〜〜〜」

「そうなんだ!ゼッタイおうちに帰ったら、うら若い顔と調子だけいい男がアリスのベッドで待ち構えてるんだッ」



「………………」

「そしてアリスは…アリスはぁ〜っ!傷物にされて嬲られて…身も心もぼろぼろになって、もう二度と僕の前に帰ってきてくれないんだっ」



 アスランは、時々キラのオーバーヒート思考についてゆけない。たぶん、当てつけているだけだと言うことは判ってはいるけれど。

 それにしてもすごい発想だ。


「だから違うってば。帰っても缶詰で仕事を手伝うだけだから、遊んでるヒマなんかないよ」

「だって…だってアリスすっごい綺麗だもん。男がほっとかないもん。僕だけ置いてけぼり…」

 目が泳いだとき、カレンダーが視界に入った。

「おみやげ持って帰るから大丈夫だよ」

「そ…そ…っそんなものじゃ…ゴク……ごまかされないよっ」

 キラのろれつがうまく回らない。



「それは残念だね。同じケーキでのキラの誕生日祝いを断られるなんて」

 それは、わざとだった。

「……………欲しい…」

「帰ってきたら少し遅い誕生日祝いをしようよ。ちゃんと二人でね」

「二人っきりで?」

「待ってられる?」


「………ぅん」


 アスランは、第一の難関を切り抜けた。

 その日の午後から早速最低限の荷物を自宅に送り、キラに見送られながら電車に乗った。両親に呼ばれているのは、あながち嘘ではなかった。親の実にくだらない事情もあったが、嘘ではない。

 2、3日というところをアスラン自身の都合により、1週間に伸ばしただけであって。

(これでしばらくバカンスが取れる〜〜〜)





 電車の中で叫ぶに叫べない、本音であった。いつものように途中下車して着替え、更に乗り換えて自宅へ向かう。玄関では両親が待っていてくれた。

「ただいま帰りました」

「お帰りなさい」


 ところがそれきり言葉がない。不審に思ってみると父親がこぶしをわなわなと震わせて怒りの表情だった。

「なぜその格好で帰ってきたのだ。親不孝者」

「………………………」


「レノアから聞いていたのだ。誰もが羨むようなしっとりとした淑女になっていると」

(母上?あなたはこの人に一体どういう説明をしたんですか!)

 嫌な顔をして母親を見ると、ちょうど父が母にはたかれている光景が見えた。



「アスランは一応世間体を気にしているんですが?」

「世間体?いや、この子は私の中で既に娘……のがぁあッ!!!」

「たわけたことを言うんじゃありませんよ!アスランはこの街では男と思われているんです。そして実際私が産んだのは息子です!」

「夢を壊すな夢を!親として子にかける夢とか、希望とか…とにかくそういったものがあるだろうお前にも!」


「ありますよ。アスランが立派な成人男性として今の変態長官を追い落とし、そして世界をリードする指導者として大成することです」

「レ〜ノ〜ア〜〜〜っ」

 妻に泣き付くアホウを残し、レノアはアスランを連れてさっさと邸内に入ってゆく。ひょっこひょっこ追いかける情けないパトリックの姿が、やたら不似合いだった。





「母上、重要なお話があるんです」

 自宅のリビングでアスランは早速悩みを切り出した。

「何でしょう?」


「俺は今、正直貞操の危機を感じています」


第18話へ→
*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:寮でも自宅でもアスランさんはいつも危機一髪(笑)
次回予告:この家族と親子ゲンカは切っても切れない関係。父親は切りたいらしいが(笑)

お読み頂きありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さいv