34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第15話−

 コソコソ…そろぉ〜〜っ………カチャ、パタン。自室に扉を閉め、アスランは深く長いため息を付いた。それは、安堵のため息だった。


「………助かった……」



 とりあえずキラにはばれなかった。まだまだ思い込んだまま勘違いしているキラに、自分は男だとは到底証せる話ではなかった。

「さすがに、計画を立てよう。じゃないと…本気でヤバい」

 何の計画か?それはもちろん、キラの興味を男に戻すよう誘導する計画だ。



「彼女のため、そして俺の安全のため!普段はアリス・ザラ。而してその正体はアスラン・ザラ計画!緻密に、完璧に進めていかねば、三者共倒れだ!がんばれ俺ェッ!!!」

 正体アスラン・ザラ。彼は今あからさまにフライングしていた。その夜怒濤の勢いでテキトーに課題を終わらせた彼は、キラ誘導計画を朝まで練っていたのであった。



「ふっふふふ!都合のいいことにこの学園は、全寮制ではあるものの、管理人に伝えれば外出や外泊は自由!そこに勝機がある!」

 彼の目は完全に据わっていた。

「アスラン・ザラ、第2の人格、出るッ!」

 などという明らかにどうでもいい計画を立ててから、のんべんだらりと季節は移ろっていった。





 まもなく、新入生がやってくる季節がやってきた。数ヶ月前からアスランもキラも当然、同学年の生徒に囲まれる生活を送っている。

 去年とは違い、今年は準備にかける時間が彼らにはある。選挙でまた再選されることは確定的だから、二人に的を絞って集中的に美容に時間をかけているのだ。そのすさまじくギラつく瞳に二人とも辟易し………正直疲れていた。


「キラ、いますか?」

 内線に電話をかけても、おいそれと相手に繋がらない。

「もう少し後にして、アリス。キラ、今パックしながら全身エステ中で、動けないのよ」

「……………は、ぁ……」


 前年の厚遇ぶりがいかによかったかが伺える。こうしてしっかり準備して今年もまたあの予算をゲットしようと言うのだ。今、先行投資をしたところで充分もとは取れる。

「あなたは?進んでる?」


「………はぃ。今、母が来ていますから」

「それなら安心ね。あなたのことは心配要らないわ〜。ホント、お母様が理事長でよかった。強い味方よねぇ〜v」

「じゃ……キラを、よろしくお願いします」

「ええ!判ったわ!任せといてッ」



 アスランはこう言って逃げていた。実際母親にはしょっちゅう入り込まれていたので、あからさまに嘘というわけではなかったが。

「今年も楽しくなりそうねぇ」

 背後で嫌な声がする。レノア・ザラだった。


「母上…このシステムいい加減廃止しませんか?」

「え?何で?」

「さも不思議そうに何で、とか聞かないでください!」


「あなたが餌食になっているから?ああ、ナイトクリームはたっぷり塗って寝ないとダメよvそれから手足も腕からクリーム塗ってちゃんと手袋とかしないとねv」

 母は、息子の言うことなど聞いてすらいなかった。



「ゼッタイ楽しんでいるでしょう!」


「ま!なんて冷めた息子なんでしょう!夢のない子ねぇ。人生には束の間の楽しみとか言うものもないと、明日への活力は生まれてこないのよ」

「な・に・が!束の間ですか!母上のはいつもじゃありませんか」

「こんな面白みのない息子を持つと母は苦労するわぁ。それよりもアスラン、彼女を連れてきていただける日はいつ来るのかしら?」

「ぇ?」

「え、じゃありません。彼女ですカ〜ノ〜ジョ〜〜〜」

「キラ………ですか?それならもう…」

「まvキラちゃんのような子があなたの好みだったのね!よかったわぁ!私の好みにもピッタリ!となれば話は早いわ、一刻も早く彼女をモノにしてらっしゃい」



「………………………」


「どうしたの?アスラン…」

「違います!キラは、そりゃ確かに可愛いとは思いますけど、友達だし………それに、彼女のせいで俺の正体がばれそうなんだ。交際とかそう言う以前のレベルですよ」


「もったいないわね〜〜〜。サッサと襲われればいいのに…」

「何言ってんですか!しかも今、小声でチッとか言わなかったですか?」

 レノアはしらばっくれる。そして彼女は都合が悪くなったのか、おほほほほとか笑いながら部屋を後にした。


「大丈夫ですよぉ〜〜。まだあの人には一言も言ってませんからね〜。あなたが学年副会長になってることもv」

「母上ッ!!!」


 廊下に向かって怒鳴ったが、曲がり角の隅でスキップしながら消えるレノアの姿が見えただけだった。アスランは諦めて自室に帰り、目の前に並んだ基礎化粧品の瓶の数にウンザリする。

「よくもまぁ、こんなにあるもんだ」

 不平たらたらで言われたとおりひとつずつ塗り込んでいく。



「何で男の俺が……」

 だが、しないわけには行かなかった。周囲には女の子だと思われている。それも学年副会長に再任確実と思われているほどの美人だと。

 その周囲の目が、ここのところとみに殺気立っていて、それはもはや恐怖だった。そんな日々が続いたせいか、二人だけやたら誰もが羨むぷくぷくの卵肌。



 順調に去年と同じ学年会長&副会長に再任され、運命の就任挨拶実情ミスコンの行われる前日、ちょっとした事件は起きた。


第16話へ→
*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:なにげ〜に母親へ紹介済み(笑)
次回予告:あま〜い青春の思い出は、甘さ控えめのあのお菓子。

お読み頂きありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さいv