34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第14話−

(きっと…好きな男が出来たときに、キラの心の汚点になるに違いないんだ)

 アスランはそう思う。立場が逆で、自分が勘違いしていたとはいえ、ファーストが男だったらと思うとぞっとするからだ。


 キラの間違った情熱が自分に向いている間は良い。彼女の勘違いはアスランの心の中で止まって、他の人には判らないわけだから。他の女の子にばれると、学校生活がすぐに気まずくなるだろう。例え、誰かをゲットしたとしたら、今のキラでは歯止めが利かない。



(か…考えたくないけど、キラが…キラが他の女の子と……その…エッチとか……………)

 考えたくないけれど、考慮に入れなければならないアスランにとっての大問題。それよりもキラの気持ちをうまくリードしつつ、彼女の誤解を解いていく方がいいのではないかと思われた。

(キラの誤解を解きつつ、キラが彼氏でも作ってくれれば俺はキラの単なる友人に戻れるし、男だとばれる危険度も低くなる!それだ!………というより、それしかないッ!)

 アスラン・ザラ御歳15歳…人生における大きな決断のひとつだった。


(この際危険が何だ!不安が何だ!これは俺に科せられた人生最大の使命なんだ!やってみせる、やり遂げてみせる!人生のためッそして俺の安全確保のためッ)

 そして彼もいささかフライング気味だった。



「じゃ、ほっぺで…」

 つとにぶすくれたふうを装う。ホントは頬と言えども女の子にキスするのは初めてだった。キラの真横に座りアスランは彼女の頬に顔を近づける。



 そして二人がふれあう瞬間、彼は瞳を閉じて………溜息をついた。

「……………やっぱ、ダメ?」


 それは、キラが急に顔を動かしたからだった。

 危うく本当のキスになりかける瞬間。今のアスランにとって守らなければならない最初の砦。ここを突破されるとなし崩しにキラは責めてくる。正体がばれるのも時間の問題だ。


(俺のこと、今は女の子だと思っててくれる方が、キラのためなんだ)

 一時的に怒りに震えているキラにとって。だから、キラの知らないうちに普通に男として出会って、元の彼女の心を取り戻せたらいい。アスランは、心底そう思った。



 だからこそ!

「ここは…まだ早いよ」

 キラの唇を指先でちょんとつつきながら言う。

「その過程を楽しむのが恋の醍醐味v」


「また判ったように言ってぇ〜」

「ハードルの低い他の女の子に乗り換える?」

「やだ。つまんない」

「じゃぁ頑張ってその気にさせてよ。私は…」

「手強いんでしょ?アリス。その通りだよ。うんうんv落とし甲斐がある」



 アスランはにっこり笑って、心の中で滝のような涙を流す。

(だからキラ、逆だってば普通!)


「キラはホントに一筋だね」

「アリスが好きだから。だから、逃げないで」

 アスランの逃げ腰は瞬時にキラにばれてしまう。

(雰囲気に流されてくれれば良かったのに〜〜〜)


「やっぱ、要るの?」

「初ちゅうだよ!初ちゅう!初女の子v」

「ほっぺは恋人とは言わないよ?」

「ステージ1」

(キラ……そんな、虫歯か何かじゃないんだから)



「はぃはぃ、じゃステージ1ね」

 アスランはキラの頬にそっとキスを贈る。まるで羽根が触れたかのような柔らかいキスだった。

「相っ変わらず難関だねぇ」

「残念でした。でもキラ、ご飯食べに行くよ」

「手を繋いでくれる?」

「………やだ」

「誰も見てないとこでいいから…」



 時々キラは上目遣いをしながらおねだりをしてくる。確かにアスランのほうが背が高いのだから自然と、上目がちにはなるのだが、それにしてもそう言うときのお願いの仕方が非常に上手に見える。当のキラはあまり気づいてはいないようだった。

「誰かが来たら見つかる前に離す。じゃなきゃしないよ?」


「それでもいいよ。本当に僕、ずっと待ってたから…」

 その時のキラは、いつもの意固地とは関係なさそうだった。

 本当に一人でずっと待ってくれていたらしくて。その間、誰も来なかったのだから、確かに寂しかっただろう。しかもアスランがいつ帰ってくるかも知れないと思うと、ほとんど寝ていないに違いなかった。



「ご飯食べたら、今日は大人しく寝るんだよ」

「え〜〜っ、何で!」

「キラの目の下の隈が、眠たいって言ってる」


「………………」

「ずっと待っててくれたのはありがとう。何も連絡しなかった私も悪いよ。けど、ちゃんと寝ないとダメ」



「アリスは昨日は眠れたの?」

「実家だったからね」

 食事を済ませるとキラが所在なげに聞いてきた


「大人しくちゃんと寝たら、もう怒んないで側にいてくれる?」

「もちろん」

 キラは笑った。


 アスランは思う。一方的にシンを振ったキラ。その時の友達の言葉を100%信じて、シンの言うことなど聞かなかった。

 彼女の中にもいささかの後悔があるのではないか?

 相手に悪いことをした、でも今さら謝れない。

 キラは今、寂しいだけなのではないか?

 だから、手近でもいい、誰かのぬくもりが欲しい?そのことにキラ自身、気づけていないだけ。



「キラ、お休み」

「ぅん…」

「夜中にゴソゴソ抜け出したりしないんだよ?」

「そしたら、アリスは僕のこと嫌いになっちゃう?」

「たぶんね」


「僕が寝るまで手を繋いでてよ」

「余計眠れなくなっちゃうよ。変わりに、キラが寝付くまで側にいるから」

「本当?」

「私がキラに嘘を言って困らせたこと、ある?」

「ない」


「じゃ、信じられるね」

「ぅん、ありがと。お休み、アリス」


 キラは少し頬を染めながら夢の中の住人になっていった。そのことを確認してそっとドアを閉めた。


第15話へ→
*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:アスラン……女の子だ(笑)
次回予告:そして再びあの季節が巡ってくる…。

お読み頂きありがとうございました。ブラウザバックでお戻り下さいv