34567キリ番リクエスト

正義と自由

−第13話−

「というわけでキラは今でも君のことを、ホモに目を付けられている可哀相な男と思い込んでいる」

「ご……ご…ッ誤解だぁあああ〜っ!!!」


 当然ながらのシンの大絶叫。に、すぐにレスがやってくる。

「うるさぁい!」

「昼間から騒ぐな!」

 などなど。


「シン…気持ちは解るが、こうも窓を全開にさせたまま叫ぶのはまずいと思うぞ」

「判ってますっっ」


 シンの目は既に涙目になっていた。彼の気持ちは解らないでもない。何の根拠もないのに男色家扱いされたのだから。しかもシンがキラに振られた理由。

 レイはホモでギルバートと夜のお付き合いをしている(←誤解)→シンとレイは仲の良い友達(事実)→男は基本的に浮気性(一般常識)→レイの魔の手がシンに迫っている(←誤解)→シンがレイに寝取られる(←既に妄想)→キラは彼氏を男に取られた可哀相な女(←妄想)→友人としてキラが傷つくのを黙って見ていられない(←変な正義感)だった。



「彼女はこうも言っていた。シンは僕より無愛想なレイを選んだんだ………と」

「選んでない!」

「君はそのつもりでも彼女は誤解している。しかも今の君にその誤解を解く術がない」

「…あなたから、説明してもらうわけには行かないんですか」

「考えてもみろシン。普通今の俺の立場から言えば、君の存在は鬱陶しいはずだ」


 つまり、今こうして話していることさえキラは知らないはずの話で。

「俺は……どうすりゃいいんですか…」

「周囲からああ言われればキラだって辛かっただろう。確かに俺は今、キラと付き合ってるけど、まだ彼女は完全に男を信用してるわけじゃない」

 嘘のような本当の話だった。



「アスランさん…」

「本当は俺でさえ、彼女の視界に入っていないかも知れない。でも、こればかりはきっと時間が薬なんだ。時が経って、彼女が俺に気を許してくれるようになったら、君との確執も素直に話せるときが来るのかも知れない」


 だから、もう少し………待ってあげて。



「アンタ…」

「なに、これだけ近い地域にいるんだから、きっとどこかで会えるときが来るさ。キラとのことは運が悪かったとでも思わないと、お前だって前へ進んで行かれないぞ」


「けど、俺…」

「今のお前はキラに振られた時点で時間が止まってるだろう?若いのに立ち止まったままではいけない」

「ってか、俺アンタと2歳しか違わないでしょ!」

「たった2年でも充実出来る!とにかく男は身だしなみからだ。せっかく掃除も済んだことだし、新しい気分になってやり直せ」


「なんかむかつく言い方ですよね」

「判るか?時間が押してるんだ」

「まだ2時半じゃないですか」


「あのなシン。昨日からここで俺たちが何をしていたと思う?」

「俺の部屋の掃除」

「ってことで、俺は学校の課題を済ませてない」

 アスランはサッサと帰ることにした。シンには言ってないが、これから別の駅へ行き店の洗面所で着替えをしなければいけない。それから帰るのだから、部屋に戻って課題をすればギリギリの時間になると思われた。


 帰れば帰ったで新たなる戦いの幕が開ける。そう、<女装がバレるわけにはいかない>に最近<キラからの熱烈なモーションをかわすこと>が加わったばかりだった。





 荷物を預けてある店の手洗いで、アスランは彼の戦闘服に着替える。ネックのリボンをきっちり締め、ガードを堅くして身構える。鏡を見ながら慣れた手つきで薄化粧を施すと、10分前の姿はもうそこにはなかった。



 学園の寮に帰ると、案の定キラが自分の部屋で待ち構えていた。

「アリス…昨日帰ってこなかった……」

「キラ…っ」

 さすがにぎくりとなる。


「僕を捨てて男漁りに行ってたんだ」

「……………」


 待って下さい。何でそうなるんですかあなたの思考回路は!!

「ちょっと待ってキラ。勘違いしてる?」


「何を!無断外泊なんて、ゼッタイ男だ!僕みたいないい女ほっといて、アリスは変な男とイチャこいてたんだ」


 まぶたに涙まで浮かべ。だがこの時のキラは嘘で言ってるわけではなかった。彼女なりに本気なのである。

「違うって。昨日外行ってたら親に呼び出されて…急に家に帰ることになって……」

 とっさの嘘を並べているものだから、かなりしどろもどろになった。



「なって……アリスももういい年だからって、男を紹介されてたんでしょ!そして話が弾んで、2ヶ月後には婚約するんだ……」

 キラは今もものすごい勢いで勘違い街道をばく進していた。


「男になんか会ってないよ」

「ホントに?僕だけ?」

「キラが一番の友達だよ」

「恋人って言って!」


「キラ!まだそう言う関係じゃないでしょ。それに…言わなかったっけ?私を落とすならハードル高いよって…」

「言ってた」

「じゃぁ…」


「キスして」

 アスランは固まった。


「ずっとここで待ってて……一緒にご飯食べようって思ってたのに、出来なくて……」

 良いところで盛大な音楽が聞こえてきた。いわゆる、腹の鳴る音…である。瞬時にキラは真っ赤になる。


「まさか……1日何も食べてない………とか?」

 キラは真っ赤になったまま、上目遣いで頷いた。



「何やってたのっ!」

「だから…アリスを待って……」

「食堂行くよっ」

「その前にキスぅ!僕を待たせたお詫びぃ〜〜っ」



 にらみ合いのすえ、アスランは何とか<ほっぺ>で済ますことを了承させた。わがままで意固地になってるだけのキラの、ファーストを奪うことはためらわれた。


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*Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice*
いいわけv:シンの勘違いは解けたけど、キラの勘違いは解けていないのです。キラからのキスのおねだりを、アスランはガマンしなければなりません(笑)
次回予告:アスラン・ザラ、ぐるぐる!

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