34567キリ番リクエスト
−第1話−
春の陽射しが、軟らかく人々を照らす。冬が寒かったせいか、狂おしいほどに舞い散る桜の花びら。 どこにでもあるような桜並木の中を、独り歩く。結局、親には付いてこないでくれといった。 目の前に見える門をくぐってさえしまえば、ほとんどと言っていいほど、煩わしい外界とは隔絶された世界になってしまう。 (却って、そのほうがよかったのかも知れない) アスランはついこの間交わされた、もはや会話とは呼べない……正確に言うなら親子ゲンカを鮮明に思い出す。 「何ですか!コレは…」 「見て判らんか?お前の入学届だ」 「それが判らないとお思いですか!父上ッ」 「なら問題ないではないか。他に何に見えるというのだ」 アスランは目をぎらつかせ、こぶしをわなわなと震わせて父親を睨みあげる。 「俺の目が腐ってなければ、名前も性別も間違ってるような気がするんですがッ」 「間違ってなどいない!だがそれは一瞬単なる表記ミスに見えて実は、私の深慮遠謀!遠大にして崇高なる計画の始まりなのだわ〜ははは!」 「……………」 自分の隣で、母はひたすら目を閉じて黙っている。それがまた不気味だった。 「猪突猛進、自画自賛はもう聞き飽きました!本当のことを白状していただきましょうか!また一体、何をくだらないことを企んでいるんです?」 「またとは何だ!くだらないとは何だ!親に向かって企むなどとは、子供の言うことじゃないぞ!」 思わず笑いが乾く。 どう考えてもこの父親………頭が弱い。 「どこをどう改竄したところで、俺の性別は変えられませんからねッ!それはたとえコーディネイターでも無理な話です」 「うむ。ここまで一心に突っ走ってきたが、どうやらお前の性別そのものを変えるのは無理そうだと思い始めてきたのだ…」 黙って聞いていると引きずられそうになるが、話がかなりオカシイ。 「………。ってか、無理ですから!」 息子の冷ややかな一言さえも、この父親はもはや耳に入っていない。 「これは親としての最後の希望なのだ。もう高望みはせん」 「何度も言うようですが!性転換は不可能ですから!それに、高望みとか、そういう以前の話ですからッ」 「お前は3年間、女の子になるのだ」 言葉が出なかった。 「………………………は?」 「お前がどぉぉ〜〜〜しても、切れんというなら仕方ない!せめて外見だけでも夢を見させてくれ」 「……………父…う、え?」 アスランの視線の先、父親の目は既に座っていた。 「男のロマンその1ッ、目に入れても痛くないほど可愛い娘を持つパパv娘萌え〜」 <家庭内暴力が発生しております。しばらくお待ち下さいませ> 「………で?俺が女だとして?恋人を作って親に紹介する。すると親は必ずこう言う、お前のような男に娘はやらん、とでも?」 「それだよそれッ!親になったら一度は口にしたい名言じゃないか〜〜〜!!!」 <家庭内暴力がエスカレートしております。もうしばらくお待ち下さいませ> アスランは思った。世の中ゼッタイ間違ってると。何故こんなオツムの弱すぎる男が国防省長官なのか?息子から見れば、どこからどう見たってただのアンポンタンにしか見えなかった。 ケンカの最後に母親に言われた。 「ここは私の出番のようね。アスラン…人生とは、妥協です!」 「性別云々で妥協したら俺は、俺はオカマになるじゃないかーっ!」 母親ともケンカして…泣きながら自室に引きこもった。だがその日、深夜前にそっと来てくれた母に考えを聞かされた。 そして…今日に至る。 ああ、外界の桜はなんて綺麗なんだろうと思った。この桜だけは自分の苦悩など何も知ることもなく、その優しさを平等に与えてくれる。 「道のりは遠いけど……頑張ってみせる」 決意して呟くと、スーツを着た職員に声をかけられた。 「ここから体育館までそう遠い道のりじゃないと思うけど………、時間がないから頑張って走った方がいいと思うぜ」 言われた言葉に青くなって、手元の時計を見た。正直…やばかった。 慌てふためいて入学式が行われるであろう体育館に走る。走っていると、これまた余計なことを思い出さずにはいられなかった。 何がって?そりゃぁもちろん、こんにちに至るまでの情けない事情をだ。 話は俺が生まれる前にさかのぼるらしい。そこから連綿と続く、クソ親父の勘違い人生。 物心ついた頃から、自分が世間並みとはいえない家庭で育ってる、なんてことはハッキリ感じていた。母親に似た娘が欲しかった父親は、往生際が悪く生まれた息子の性別を改竄する、ただその為だけにエリートコースを一直線に大驀進し、とうとう国防省長官にまで上り詰めてしまった。 しかし…だ。件の父親が己の権力や金にモノを言わせ、いざ息子の性別に関する個人情報を改竄しようとしたときに問題は起こった。 判るだろ?本人の猛反対だ。 その前に…そんなタワゴトを喜んで受け入れるようなら、俺はとっくの間に家を出て、とある街に移り住んでただろう。 しかし、それでも親父は諦めなかった。 挫けなかった。 そして結局、あの無茶苦茶な家庭内騒動と化したのであった。でもってひたすら平行線を辿る果てしなく下らない親子喧嘩。 これで判っただろ?俺がひねた理由。 ぅおっと、時間がない。走るぞ! 第2話へ→ *Freedom*What does it mean that they said Freedom and Justice?I understand it is my life and my heartful girlfreiend!!*Justice* いいわけv:憧れサイトの門倉様から初キリ報告頂きましたvもはや作品とも見まごうような素敵すぎる萌え材料を頂いて……ノリノリで書いてたら10話くらいの予定が、アレレレ?ってなことに。 お気に召していただけるかどうか、ドキドキです(笑)思うようにドタバタ書かせて頂いたので、みなさまどうか楽しんでいってください。今回はアスラン危機一髪物語………ですv 次回予告:フラガ→アスランを抜けるとそこにはキラがいた(笑)(c)川端康成『雪国』 |
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