それでもアスラン愛してる!!?     Happy Birthday Athrun 2009企画様献上SS

サプライズは、お好き?



<第1話 キラ・ヤマトの場合>


 彼との出会いは、キラにとって至極自然に思えた。それは確か年度初めだっただろうか?仕事帰りのバス停に並ぶ人が、そういえば増えたかな…ぐらいの記憶しかなかった。その青年は、キラと同じ時刻にそのバス停に並ぶこともあれば、便を逃すこともあった。過ぎ去るバスを呆然と見送る姿を最後尾の席から何度か見かけ、なんとなく可哀想に…と思ったこともある。最初はそんな程度だったように思う。


 それから一言二言言葉を交わすようになった。ある日たまたま残業して終便を待っていたら、あとから来て彼女の後ろに並んだ。

「こんばんわ。今日は遅いんですね。残業ですか?」


 初めて彼から発せられた声は脳天に響くほど甘いテノール。わずかに舌足らずかな、とも思うが気になるほどではない。そんなことより、笑顔で話しかけてくるその人を初めてまじまじと見たとき、キラは最初見とれ、そしてすぐにちょっとむっとした。自分と違い、顔も声もきれいな男なんて反則だ。こんなに整いすぎている人がこの世にいるのかと思った。



「ええ、残業でしたけど、途中ですっぽかして帰っちゃいました」
「仕事を?」

 何も知らない彼の言葉に少しカチンと来た。


「あいにくタクシー代が出るほど潤った財布じゃなくて」

 嘘じゃない。そうでもしないと本気で事務所のデスクの真下でお泊まりになりそうだったから。
「俺もだよ。今日はちょっとミスして残業」








 時間をかけてその人とは話すようになっていった。


「そういえばどちらにお勤めなんですか?」
 話の継ぎ目に困って聞いてみると。
「レノア機械工業。君は?」
「カオシュン運輸です。引越屋の」

 それが、キラの中ではかなりまともな最初の出会いだった。


 その日は終便で遅くなったこともあり、彼の申し出で最寄りのバス停から自宅の近くまで一緒に歩いて貰った。<深夜、女の子が一人で歩いていると危ないから>というありきたりな理由で。








 秋も深まる頃には会社帰りの時間が明るいことなどなく、いつしか彼に車で送ってもらう関係になった。ただ、一つ難点は、アレックスと名乗った彼のお一人様ワールドに時々ついていけないときがあることだけで。

「君は、一目惚れって、どう思うかな?」
「お米なら美味しいほうかと…」

「いやそうじゃなくて。パッと見たとき、物ならこれはいいなと思うことがあるだろう?でもそれが人だったらどうすればいいんだろうって」
「よく解りません」

「だよねぇ。要するにその時点では外見だけ見て判断してるってことなんだ。その人の性格も知らずに判断してる……」


 一人でう〜〜〜んと唸って自分の世界に入っていくアレックスを、キラはどうすることも出来ずに放っておくしかなかった。しかもその話は日を追うごとに変わる…。





「好きだって思ってても、もし先約がある場合、やっぱ諦めるべきだと思う?」

「………はぁ…?」
「それともその人を押しのけてでも、一歩を踏み出すべきかな?」

 途中、キラはこの人は不倫をしているのかと勘違いしかけた。





「子どもって、最初は気にも止めなかったんだけど、最近なんかいいなぁって思うことがあるんだ」
「そうですね、可愛いでしょうし」

 世間話だと思って適当に答えたらひどく喜ばれた。


「本当に?キラも欲しいと思うんだ?」
「え?ええ…まぁ、一応には」

「ありがとう。やっと決心が付いたよ」


「あの……失礼だけど、ちゃんとした恋愛してます?」

 その時のアレックスの嬉しそうな笑顔は本当にきれいではあった。



「うん。問題ないと思うんだ。俺も独り身だし、君にもどうやら付き合ってる人はいないみたいだし」

 その時点でキラはやっとこさある結論に行き当たった。


「……………僕???」


「ずっと見てきたけど、俺の一目惚れは間違いじゃなかったと思うんだ」
「アレックスさん?」


「好きです。だから、付き合って欲しい」



 きっかけは、馬鹿の一つ覚えのようなベタなドラマのような話だった。一応OKしたものの、けれどもやっぱりアレックス独特の世界についていけないと思うことはあって。時々意味不明な独白ワールドに入っては悦に入る彼を放置した。

 それ以外は………強いて上げれば、あまりに物欲が低いのも考えものだと思う。たとえば誕生日くらい何か記念品を贈りたいと思う。しかし、彼はキラが側にいてくれることが嬉しいから、それ以上要らないと笑うばかりで。キラは少々…いや多少困っていた。


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