第24話



 携帯電話が鳴った。

 イザークが頭を抱えた。


「キサマ……毎度ながらそのいかがわしい着信メロディはなんとかならんのか!」


「いいじゃんか!最近ハマッてるんだから『エロっ娘メグちゃん!』………あーはいはい」





 また携帯電話が鳴った。

 こちらもイザークらしい。『プラントに吠えろ!』


 しばらく話して、イザークは通話を切った。

「俺はこれからオーブ行政府に行く。あとは勝手にやっといてくれ」


「イザーク?」


「こんのクソ忙しい中、私用だけでオーブに来られるか!政府に休暇を申請したら、公費で交通費を出すから、オーブ政府との政治交渉に行って来い、だとさ。じゃぁ後でな。それまでにそのいかがわしい春頭を元に戻しておけよ!」





 ディアッカが真っ青な表情になって、振り向いた。ところがすでにイザークはいない。


「なぁアスラン、一つ確認していいか?」

「なんだ?」



「お前がキラを孕ませたって話……マジ?」

 彼はすでに切れた携帯電話を指さしつつ、がくがくと震えながらそう聞いてきた。



「本当だと言ってるだろう」


「だったらお前こんなとこでナニしてんだよ……」

「キラとのファースト・キスの勉強」



 ディアッカは持ってきたトラベルバッグで、力いっぱいアスランを張り飛ばした。



「お前!しっかりヤることヤって、新居まで構えて、キスすらしてないだと〜〜〜!」


「声が大きい!」



「バカかおまえは!そんなもん勢いだろうが!」

「勢い?いやでも、キラには嫌われたくないんだ…」


「この唐変木が…。ヤることヤって…子供デキて、キラは産むって言ってくれてんだろ?そこまでお前を受け入れてるって事じゃんかよ………。なんでキスくらいして安心させてやれねぇんだよ……こんなとこでへたれてないで、もっと男らしくしてろよ……ハァ…」



「そんなこと言ったって……」

 ちょっとさすがに今までのアレコレを思い出し、罪悪感にむせかえる。





「とにかく行くぞ!お前ん部屋で、ミリィが呼んでる」

「ミリィ?ああ、ミリアリアか」


「ああ、すんげぇ剣幕でさ、ちゃんと説明しないと殺されるぜ?お前……」





 ディアッカに昼食をおごり、マンションに帰る。

 リビングに入ると、そこは百合の花咲く女の花園だった。





「あああ〜〜〜迷いますわねぇ」

「確かに、このピンクのドレス…すっごく可愛いんだけど、でもこっちの紫のベルベットのドレスも色っぽいわよねー…。キラ、何着ても似合うってある意味犯罪よ?」


「ミリィ〜〜〜。ラクスも〜〜…僕もう疲れちゃったよ、コレで何着目だと思ってるの?」



「まだ10着目ですわよ。まだまだですわっ!」

「そうよ!この期を逃さずキチンと映像データにして残しとくんだから!」


「なんで〜〜〜」

「ふふふ!キラにはまだ解らないのかしらねぇ…女の楽しみが……」




 つまりはお色直し用のドレスの試着をしているのだが、彼女たちは当初の目的をすっかり忘れ、着せ替え人形なキラを満喫している、と言うわけであった。





「コレ……は、男は入っちゃいけないゾーンなのかな……」

 ディアッカが呟く。





「…可愛い……、キラ……可愛すぎる………」

 アスランはすでに夢の中の住人になっていた。





 しかし都合の良いことに、女性陣は着せ替えに満足したのか、ディアッカとアスランに気づくことなく、怒りゲージがそのまま下がりつつあった。


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言い訳v:冷や汗たらたら

次回予告:アスキラ遅すぎる初キッス。ところが予想外の事態に、ディアッカの現実的なツッコミがぐさりと突き刺さる。

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