第19話



「何食べる?」

「ん〜〜〜何でもいい…」

 全く興味のなさそうなキラ。


「そう言うわけにはいくか。このまま屋台でラーメン……というわけにもいかんだろ」

「べっつにー、いいんじゃない?」

「特にないんだったら、任せてくれるな」



 キラはしばらく考える。

「ラブホテルで僕を、って言うんじゃなきゃ何でもいいよ」←やっとこさ出た結論


「しないって!」

「おでんの具は僕……ってのもなしだよ」←未だ警戒中


「するか!少しは信用しろよ」

「あれだけ変態根性を暴露されたらねぇ………」

「悪かったな」





 通されたのはちょっとした高級レストランの、しかも個室だった。海の見える夜景が美しい、どこから見てもいい部屋だ。



「……予約してた?」

「キラが本気で屋台でラーメン、とか言ったらキャンセルするつもりだった」



「僕、チャーシューがよかったかな〜?」

 冗談半分にそう言ったら、アスランは本気で焦りだしたので、慌てて「ウソだよ、ウソ!」と言った。





 店の人にアスランは、お任せで、みたいなことを言ってたけど、出てきたのは魚コースの料理でキラを少し喜ばせた。


 ふと視線が合うと、アスランはやたら嬉しそうだった。これまでの苦労がウソのように。





「……大体、想像はついてるけど、話って何?」

「市内のマンション買ったんだ。キラも気に入ってくれると良いと思っ……」

 言い終わらないうちに、ハロがアスランのみぞおちを直撃する。



「……ヘ、ンなこ…と、して、ないだろ?」

「あのねぇ、一つ聞いて良い?今、買った、って言ったよね?……買った?」

「うん」


「その前に言うことはなかったの?僕さぁ、この話、初耳なんだけどー…、フツーそーいう大きな買い物する時には、話の一つぐらいするもんじゃないの?大根やなすじゃないんだよ」

「大丈夫だよ。交通便もいいし、セキュリティもしっかりしてるし、万一に備えて病院だって近いとこ選んだし……」



 ガコッ!と、音をさせて、ハロはアスランの頭の上に「乗る」。そして小馬鹿にするようにぴょんぴょんはねている。キラはひたすら無言だ。どうやら怒っているらしい。



「…嬉しかったんだよ。俺、両親があんな事になって…そりゃ一応遺産相続はしたけど、俺こんなだから、カガリとだって…この先ずっと一緒にいられる訳じゃないって事ぐらい、判ってた」


「アスラン?」



「親のやった事なんて、関係ないとは思うけど……カガリはオーブの希望だから、だからこそそう言うわけにもいかないだろ?悩んでた時に、こんな事になって…そりゃっ、キラには悪いコトしたなって思ったけど、掴みかけた幸せを逃したくなくて……俺、バカだからさ…」



 頭の上でひたすら陽気に跳ねつづけているピンクハロが、やたら場違いに映った。


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言い訳v:キラ、警戒しながらもちょっとアスランに接近。いやぁ、話の前半がアレなので難しいことといったら(←そーいう設定で書いたの秋山じゃん……)ところで、ザラ家の遺産って、相当なものだと思われます。研究資金やばかったヒビキ家と違ってね。つまるとこお金持ちのボンボンだよね…。

次回予告:ついに二人は念願の新居へ……ところが入った瞬間キラはアスランを張り飛ばす。一時はアスランの気持ちに同情したものの、きちんとした説明のないまま言われた一言に、ピンクちゃんが過敏に反応した。

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