第16話

 

 アスランは寝室で悶々としていた。

 

(キラの手…小っちゃくって、温かかったなー…それに、やっぱ笑った方が可愛いしv

 考えるほどに眠れなくなる。そして彼はそのまま一夜を過ごすことになった。

 

 

 翌朝。

「おはよう、キラ君」

「あ、マリューさんおはようございます」

 

「キラ、昨日はゆっくり眠れましたか?」

「うん!そりゃぁラクスと一緒だもん。ラクス…やっぱり暖かくてきれいでふわふわしててすっごく好き!」

「まぁ!キラもですわ!もう可愛らしすぎて、このまま朝なんて来なければなんて思ってましたもの」

 

 

 ラクスのはしゃぎようにキラも苦笑する。その笑顔が誰かを撃沈させていることも知らずに……。

 

「ラクス〜朝が来なかったら、僕はラクスの笑顔を見ることはできないよ」

「そうですわね。ああでもこうやって一日中いられるのも今のうちだなんて!このままアスランとだなんてもったいないですわ〜〜〜!」

 

「ラクス〜〜〜。思い出したくなかったことを〜〜〜……って、アスランは?どこ?」

 

 

「そこの陰で鼻血吹いていますわよ。いい加減出てきたらどうです?へたれさん」

 

 

 ラクスの視線の先には、果たしてアスランが手で鼻を押さえていた。そしてその足下には、血の池ができていた。

「ぅわ!汚な!」

 

「ごめ…キラ、今日、俺でかけてくるから」

 

「あ……そ…」

 そう言ってアスランは、さっさと血の池を片づけ、どこかに電話してきたかと思うと、朝食も食べずにそのまま出かけてしまった。

 

 

「何なの…?一体」

 

 

 時間の経過とともに気になってくる……というより、やましいことがありすぎで、正直なところ気が引けていた。さすがにマズイと思ったのか、ラクスが電話をかけている。

 

「ね、ラクス…、アスラン、何て?」

 

 キラが焦って声をかける。無駄に時間が流れ、ラクスは携帯電話の電源を切った。

 

 

「判りませんけど、電話に出ないんですの。帰ってこないことにはどうしようもありませんわね……」

 

「ねぇ……さすがにヤバイかな…?ほら、ここんとこ僕たちであれだけいじめちゃったし」

「でも、最初に種をつけたのはアスランの方でしょ?」

 

「う゛…、ま…ぁそれを、言われると……そうなんだけど、追っていった方がいいのかな?」

「どこへ行ったかも判りませんのに?」

 

「あ…そうか………」

 

 

「でも…帰ってこないことには何にも判りませんし、あれでも悪巧みのできる人ではありませんもの。だからキラ、今はお食事にしましょう!スープが冷めてしまいますわ」

「うん、そうだね」

 

 

 そう言いながらもキラは玄関を見に行って、それでもいつもと変わりのないことを確認し、ため息を一つついた。そんなどこか不安げなキラを、ラクスは痛いような表情でずっと見つめていた。

 

 

(もしとんでもない事をしているのでしたら、一回締め上げる必要がありますわね)

 

 

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言い訳v:ラクスはキラを愛するがゆえに微妙に誘導しています。キラの気持ちもわずかずつ傾いてきました。ああ…ここ難産だったなー…。アスランはっきりした動きないし。

次回予告:ラクス昇天…しかし事態は一変。アスランの打った先手はキラ達の「想定外」だった!マルキオ邸から荷物が運び出され、怒濤の予感をかもし出す……。

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