第15話

 

「What are you doing here!!」

 

 雷撃は一瞬にしてアスランの身体を黒く焦がす。

 

しかし。

「復活早ッ」

 

 

「アスランはわたくしたちを夕食にさそいに来たのではなかったのですか?」

 

 ややあって、彼は答えた。あからさまに渋い顔をしながら。

「ええ。そうですよ」

 

「でしたら、キラを抱きしめる必要はありませんわね。さ、キラ、こちらへ」

 

「う…うん」

 キラが素直にラクスの元に帰る。腕の中に残っていた温もりに、アスランは切なくなった。

 

 

 夕食時。

 キラはラクスとマリューに挟まれ、子供達の防衛陣を引かれ、アスランに入り込む余地はなかった。食後、布陣にはバルトフェルドも加わりいっそう強化される。楽しそうに話す彼らを遠巻きに見ながら、ますます募るキラへの思いがあった。

 

 ところが寝る前、キラは自分から目の前にやってきた。ここのところあり得なかった反応に、心臓が高鳴る。

 

「アスラン、ちょっと…」

「何?キラ」

 

「座って」

 

 何だろうと思いながらアスランがソファに座る。すると、

「手…貸して」

 

 キラがそう言うので素直に手を差し出した。するとキラは不思議そうに見つめてきて、そしてなぜかほほえみながらアスランの手を両手で包み込んだ。

 

「どうしたの?」

 

 相変わらず心臓はばくばく言っているが、ここはガマンだ。すぐにでも飛びついて抱きしめたかったがぐっと押さえて、努めて冷静を取りつくろう。引越完了まで、周囲は強敵だらけだ。うかつには動けない。それでも、頬が赤くなるのは押さえられなかった。

 

 

「す、ごい…完璧……」

 

 意味不明のセリフと混乱を残したまま、キラは嬉しそうに笑ってラクスの寝室に消えた。

 

 

ラクス寝室。

「ラクス!ラクスッ…すごいよ」

 

 キラがはしゃぎながら部屋に入ってきた。自分たちだけ先に部屋に戻っていたので少々心配ではあったが、この様子ではマチガイはなかったのだろう。ラクス達はホッとした。

 

 

「何があったのですか?キラ」

 

「アスランすごいんだ。さっき、「お座り」と「お手」をさせてみたんだけど、もう完璧!飛びつきだってなくなってるんだ!」

 

 

 隣にいたマリューの目が点になった。どうしてこう、コーディネイターの視点はどこかずれているのだろう?自分たちよりはるかに高い能力的素地があるというのに。

 

「本当にやったのですか?」

 

 

「うん。あれ程飛びついてたのに、大人しくなっててさ。僕の言うこと、ちゃんと聞いてくれるんだ!ありがとう!全てラクスのおかげだよ」

「お役に立ててよかったですわ〜キラ〜〜!嬉しいですわ〜」

 

 

「……………。たしかに…イヌね……………」

 

 

第16話へ→

言い訳v:今までの路線を崩さず、コーディネイターのどこかずれた視点と、アスランへの気持ちのゆれ動きをゆっくりと描いてみました。この時点でもキラは自分の気持ちに気づいてません

次回予告:アスラン動く!不審に思いつつも気にもとめないキラは男の子気分に戻ってラクスと百合ップル風味を満喫。しかし嵐の前の静けさにだんだんと言いしれぬ不安が高まってくる…。

◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇*

お読み頂き有難うございました。ブラウザバックでお戻り下さい。