第14話

 

「…去勢?……何の話………?」

 

 

 アスランが面食らうのも無理はなかろう。鳩が豆鉄砲だ。

「いやだから、アスランの……」

 

 キラは未だにぼうっとしていた。本とアスランの顔に視線を往復させながら、何やら真剣に考え込んでいる。

「それはわたくしも考えないではありませんでしたが、太りやすくなるとも聞いておりますわ。それは今しばらく考えた方がよいのではないですか?」

 ラクスが水を差した。部屋のドアの前で面食らっているばかりのアスランなどアウトオブ眼中だ。

 

 

「太る……?アスランが………太る……………それはちょっとイヤかも……」

 

「食事制限は大変そうよ。そりゃそうよね、あれだけの性欲がそのまま食欲に替わったとしたら………」

 

 

 キラはアスランをじいっと見つめ、う〜んとうなり、そして青くなって否定した。

「そりゃヤダ!それで、あてどもなく食べながら、ヘンなマイクロユニットをいじり続け、揚げ句のはてに執着心が強くなるって言うんでしょ?冗談じゃないよ、ゴミが増えるだけだ」

 

 

「???………キラ?」

 

 アスランはイマイチ状況を理解できていない。

 

 

「アスランの去勢はやっぱ却下!他の方法で何とかするしかないよね…」

 

 

「キ…ッ………キラァァアアアアアーーーーーーーッ!!!」

 

 

 アスランの絶叫に、今更ながらキラは慌てふためき、手にしていた本を急いで後ろに隠す。

 

「アアア…アスラン!いつからそこに?」

「ずっといたよ!それよりもっ去勢って何!?そこにおいてあるものはどういうコト!!?」

 

 キラはアスランに両肩をガッシリとつかまれ、カクカクと揺らされながら、彼が情けないが真剣な表情で自分を見つめているのを見た。

 

「あまりキラを揺らさないでくださいませ!」

 割り込んできたのはラクスの声と一冊の本。それはアスランの頭に見事にめり込んだ。

 

『女性の身体と妊娠〜生まれてくる赤ちゃんのために〜』

 

「痛い!ラクス!こんなもの俺にはいらな……ああ、要るかやっぱ。…と、そんなことよりキラ!」

 

 そう叫んでアスランはキラの身体を廊下に引っぱり出し、部屋のドアをバタンと閉めた。それは一瞬の早業であった。

 

 

「あ…いや、アスラン……これは、その………」

 

 しどろもどろになってキラが何かを言おうとするが、それは全く言葉にはならなかった。自分たちが今まで何をしていたかを考えると、さすがに気が引けた。ところが、

 

 

「ごめん………」

 

 そう言ってアスランはキラの身体をすっぽり包み込んだ。男性の若干高い体温がキラをどぎまぎさせる。

 

 

「俺は…そこまで、キラを困らせてたのかな……?」

 

 彼は少し苦しそうに笑いかけた。

 

 

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言い訳v:キラの心をアスランに向けさせるためには「うしろめたさ」から入るしかないのかな…と考え、この設定でどうしようかと思いました。やっと、キラの心が傾きかけてきました。

次回予告:後ろめたさ全開のキラはアスランに大接近。そしてキラとアスランは大喜び(?)しマリューは呆れ果ててしまった。

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