腰痛と僕と彼女の微妙な関係



アンビリーバブルショック!

 たとえて言うならこんなイメージだ。今日も痛む腰を抱え、居並ぶ侍女たちにドレスを着せてもらう。


 自分で着ないのは、一人では着られないから。


 ってか、どぉして王様とかお姫様とかいうのは、一人で着られもしないドレスなんかを毎日着るのだろうか?僕には不思議でたまらなかった。





 イヤ!その前に、肝心なことを話しておかなくちゃならない。


 それはものの半月前まで僕はフッツ〜〜の受験生だったってことだ。自宅の部屋では学校の教科書を、大学受験の参考書が覆いつくしそれは見事な惨状だった。


 それを…救った……とでもいうのだろうか、どう考えても中世RPGに出てくるような典型的な場所…早い話が異世界に僕はいて、何故だか王妃という立場になっている。





 ………なんで?


 どうして僕はこんなところでのほほ〜んと、豪奢なドレスを着てお茶を飲んでるの?

 激変した状況にここのところ言葉が出てこなかった。





「キぃラぁあああっv」


 陽も高く昇ろうかという頃、とある男が入ってきた。ただでさえ僕の周りにかしづいていた侍女たちが、さらに頭を下げてたった一人の男を迎え入れる。



 そうだ、事の発端はすべてこの男だ。


 僕はいつものように毎日入ってきては、懲りもせず昼間っから僕にダイブしてくる変態の顔面に、思いっきりこぶしをめり込ませた。





「君も飽きないねぇ」


「飽きるなんて無理v到底ムリっv」



 そして毎日同じやり取りが繰り返されている。僕の言うことなんてまるで聞いてない、腹が立つほどウキウキとした言い方!



「僕だってもう無理!」


 そしてこのセリフもいつものことだ。

 大体、受験勉強中だった僕の部屋にいきなり現れて、誰にも奪われたことのない僕のファーストをいきなり奪い、しかもそのときが初対面にもかかわらず「結婚してくれ!」とこの男はほざいた。


 あまりのことに訳判んなくて、僕がおろおろしている間に、さっさと自国の王宮内にある神殿に連れて行ったかと思うと、そこで僕が王妃にならなければならない理由をこんこんと説明された。



 っつーかさぁ、フツーそーいう話って、連れ去っておいてから話すべきじゃないよね?



 何でも、話によると僕はこの世界の女神の生まれ変わりで、この国の正当な後継者を生むべき存在なんだって。

 なんだいそりゃ!





…で、当のアスラン。

「せっかく頑張って時間空けたのに〜〜〜。じゃぁさ、シないから、抱くだけ。ねv」

 なぁ〜〜〜にが、ねっv……だ!そんな気毛頭ないくせに!


「や…約束さえ、守ってくれるなら」



 いつの間にか侍女たちは姿を消していた。

 ちくしょう!これだから気の利きすぎる侍女は嫌いなんだ。





 ふと気づくと彼はきれいな藍色の髪を揺らしながら僕に近づいてきて、ゆっくりとベッドに腰かけ…そしてやんわりと僕の身体を包み込んだ。

 そんな程度のことに、抵抗できない僕も、いつもながら情けないと思う。毎日の事もあってすぐに力が抜け、その青緑の瞳にドキッとした。



「大丈夫だよ。俺は約束はちゃんと守ってるし、キラを困らせたりしてないだろう?」

 そうだ。確かに「困る」事はない。僕が20年近く過ごした世界に全く帰れないわけではないし、ここーつまり王宮に閉じ込められているわけでもない。


 ちゃんと、アスランに一言伝えておけば、何をしたって許されるし誰も咎めるわけじゃなかった。

 なぜなら彼は、この広い国を統べる王様で、僕は彼の王妃らしいから。





 今日もいつものように彼の口づけがシャワーのように振ってくる。最初頃はいつまで保つかなと思っていたが、一向に止む気配はなくそればかりかだんだん遠慮がなくなってゆくような気がしているので、どうやら僕のことは本気らしい。


 そりゃ、性格はちょっと変態ちっくだけど基本的に優しいし、あれから非常識なことは言わないし、見た目だってパーフェクトなわけだから、僕もその、満更じゃないけど?





「困ってることはないよ。もう全然。ちょっとアスランが変態さんなことを除けば」


 気になることといえば、最近また胸のサイズが大きくなったような気がすることくらいだろうか。

 あ…加えて彼の絶倫さもね……これはさすがに辟易してる。





「あっちの言葉で、ぞっこん…って言うんだろ?」


「君…意外に耳年増だよね……」

「初めて君を見たとき、俺は動けなかったよ。これだぁって、直感が来た」


「でもどう考えても僕、この世界になんら関係ないように思うんだけど?」





 思いすぎじゃない?

 ってか、ぞっこんすぎるから、君が一方的にそう思いたいんじゃないの?


 僕の瞳が疑惑100%に揺れたとき、久しぶりな闖入者に断続的に続いていたキスはさえぎられ、僕は心底ほっとした。

 だって…ほっときゃ、永遠に続くんだもん。アスランのキスは!





「そんなことはありませんわvキラ様はわたくしたちに必要なお方。お連れするようにと、へたれさんのしりを叩いたのはわたくしですのよv」


「ラクス!」



 声を上げると同時に、僕は「救出」され、アスランは床暖房の効いた石床に見事に、その端正な顔をめり込ませていた。


「邪魔をしないでください。いいところだったのに〜〜」


「アスラン!あなたがしていることの意味を、あなたはわかっているのですか!私はキラ様を困らせないという条件付で、あなたとの婚礼を許可したのですよ」

「だったら…」



 アスランの猛抗議をラクスはさえぎり、隠し持っていたハリセンで頭をスパ〜〜〜ンと張り飛ばした。





「だからといって、誰が毎日毎晩キラ様と事に及べと言いましたか!全く!どうも水晶にキラ様のお腰がお辛いのだとの結果が出ると思っていたら!」

「え?ラ…ラクス……?もしかして…全部、見てた?」


 キラはぎくりとして身体をこわばらせ、恐る恐るラクスのほうに視線を向けた。ところがラクスはけろりとして言う。


「いいえ、キラ様。私の水晶に出るのはすべてことのはなんです。キラ様は毎日腰の痛みとだるさを訴えられ、治らないかなと念じておられたのでしょう?そのキラ様のお気持ちが、私の水晶に伝わるのですよ」


「文字情報…なの?フツー映像だと思ってたけど…?」

「あまり詳しくは聞かないでくださいましvこれはあの水晶の特性ですから」


「はぁ〜〜、そうなんですか」





 いまだにびっくりすることもある「こちらの世界」の細かい事情に、キラは時々戸惑う。


「と…ところでラクス!神官たるあなたはこんなところに一体何をしに来たんです?」


「まぁ、ちっともお判りになりませんの?へたれ変態からしばらくキラ様を救出しに来たのですわ」

「ぇ?ラクス?」


「というわけで、キラ様のお腰が治るまで、わが神殿にて預からせていただきますv」

 言うが早いか、ラクスはドレス姿のキラの手を引き、王宮内の神殿にこもったかと思うと、硬く門を閉ざしたまま、呼べど叫べど出てこなくなってしまった。





 1ヵ月後、めでたく腰の痛みも回復し、いささかアスランへの恋情を募らせたキラは彼の元に帰ってきたかと思うと、声高に宣言した。


「アッスランv言っとくけどエッチは5日に1日までで、一日2回までが限度だからねっ」



「ええぇええええ〜〜〜〜〜」



 目の前の大バカの猛抗議も、さすがに居直った僕の耳には入らないね♪



「じゃなきゃ僕は遠慮なく、ラクスんとこに帰るからv」


 あの黒神官に何を吹き込まれたかそう言って、キラは久しぶりに自分のベッドで熟睡できる日を迎えた。



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言い訳v:『桜を継ぐ者』の後日談と言えば後日談?別話と言えば別話。アスVSラクが書きたかっただけかも知れません。でもアス×キラ。キラはアスランのこと好きらしいんですが、自分のためにラクスを程良く利用しています。それにラクスも乗っかってる状態。

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