Please sit my side.

第4章

 

最終話 「あら困りましたわねぇ〜。こんなへたれを愛して止まないのもキラちゃんですのに……」

 やはりというか、広く非常に豪華な作りのシャワー室−それは到底シャワー室と呼べるものではなかった−に入り、温泉だという湯船に浸かり、出てきたらアスランが待っていてくれた。



「広すぎるよぉ、ここ…」


 即座に彼に笑われる。髪を乾かしたり、基礎化粧品を借りたりしている間にアスランに入ってもらい、二人して先ほどのリビングに戻ったらそこで待っていたレノアにダイニングに案内された。







「…………………」



 途端にキラの目が点になる。

 何がって?そりゃぁもちろんテーブルの上のきちんと配膳の済んでいる夕ご飯にだ。



 本日のメニューは、炊き込みご飯(赤飯)、肉じゃが、コールスローサラダ、わかめのスープ、漬物3品(きゅうりのぬか漬け、昆布の佃煮、梅干し)だった。

 その場違いとも言えるあまりな和食にキラはしばらく動けなかった。





「あら?キラちゃんは白いご飯のほうが好みだったかしら?嫌いなものがなければいいんだけど………」


 いや、嫌いなものは特にない。ただ、屋敷の造り、間取りからして洋食という思い込みが強すぎただけで。



「いえっそんなことないですっ!すごくおいしそうで………」

 まごつくキラの頭上から優しい言葉が振ってきた。


「まさか和食とは思わなかった?」

「………」



「偶然だと思うよ。結構まんべんなく出てくるから。とは言っても、赤飯なんか思いっきり母の魂胆見え見えだけどね…」

 軽く睨む息子に母は、おほほほほほほvと答えてごまかした。





「さ、冷めないうちにどうぞ」

「あ、すみません……」



 その頃にはパトリックも復活していた。

「さぁキラちゃん、遠慮なく食べていってくれたまえ〜」

 これまた偶然か、テーブルの真正面に向かい合うようになったキラにパトリックはひたすらご機嫌のようだった。

 出会ったときとは真反対の、終始ニコニコ顔にびっくりすると言うより、少し呆れてしまう。



「ぁ…ありがとう、ございます………お義父さま」


 たどたどしい様子でそう言うと、パトリックは身体をミノムシのようにさせて悲しがった。

「いやんいやん!そんなかたっ苦しいこと言わずに、遠慮なくパティと呼んでv」



「…………………」



「無理ですよ!いきなり。そんなことキラに強要しないでください」

「放蕩息子には言っておらん!」



「あら困りましたわねぇ〜。その放蕩息子が結婚相手に選んだのもキラちゃん、こんなへたれを愛して止まないのもキラちゃんですのに……」


「……………ぐ……ッ…」



「残念ですわね。キラちゃんの料理をおいしく頂いてウハウハ仲間へは、まだ入れませんのね」


 当然、キラは真っ青になる。

「あ………ぇと…っ。お…お義母さまの料理のほうが僕なんかより……」


「そうかしら?でも、おいしかったのよ〜〜〜」



「……は…ぁ………」


「は………入る入る!入りたいッ!ぜひ私もキラちゃんの料理で絶頂を味わうぞ計画に入れてくれぇーっ!」



「仕方ありませんわね。ではお一人様追加入閣と言うことでv」





 レノアの料理は確かにおいしかった。キラたちと同じ庶民派で、彼女も安堵した。

 しかし会話が会話だけに、料理だけを堪能するというわけには行かなかった。



 その余韻からか、意味深な視線を向けられ、アスランの部屋に押し込まれてもさすがにいつもの調子が出なかった。

 アスランはひたすらキラに謝り通しだし、キラはと言えば初めて泊まる<彼氏の実家>に戸惑ったままで。やはり一つしかないベッドでそっとアスランに抱かれて眠ったものの、実に見事に朝まで何にもなかった。





 翌朝、いつもより少し遅く目が覚め、慌ててダイニングに行くと、レノアの姿がなかった。


 どこかと思えば、朝から電話をしていて。



「こちらも急なお話で大変申し訳ございませんが、お宅のお嬢さんのことで非常に大事なお話をさせていただきたいのです」

 などと言いながら、キラの両親にアポイントメントを取っている手の早い彼女を見つけたのだった。


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言い訳v:ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!このシリーズもなんだかんだ言って45話目になるんですねー。自分でも驚きです!
実はこんなレノアさんのことですから、事前にある程度の情報収集はしています。この人に限って行き当たりバッタリなんてありえません。でもその辺をアスランたちに言わないだけです。

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