第24話
こんなことが続けば、当然そうなることは分かり切っていた。頭では判っていたつもりなのだが。 「おかしいよ。もう…2ヶ月………」 カレンダーとにらめっこしながらキラは指折り数える。 ※当時既にカレンダーはありました。「暦(こよみ)」といいます。 「何がですかv」 「ぅわッラクス!」 いい加減慣れたとは言っても、相変わらずラクスの神出鬼没さに驚愕することもしばしばあった。 「そぅいえばキラ…ずっと実家に帰ってないですわね…」 ※後宮の女性は生理の度に実家に帰るしきたりがあった。 「ま…それはアスランが帰してくんないからでもあるんだけど………」 「はっきり当てて差し上げましょうv来ない…のですねっvキラ様ッv」 目の前のラクスにキラは唖然となって、なかなか二の句が継げなかった。 「その前になぜあなたがそんなに喜んでいるんです?何でそんなに嬉しそうなんですか?」 ラクスはキラの肩に両手を当てて、にんまりしてのたまった。 「キラ…男の子ですと、いいですわねv」 「…………………」 だから………つまり、デキちゃったって…ことで………。次の瞬間、キラの前からラクスは消えた。 「あ…ぁれ?どこ行っちゃったんだろ?ラクス…」 困ったなと独り言をブツブツ呟きつつ廊下に出ると、突然誰かにぶつかられ……ぎゅぅう〜と抱きしめられた。白昼堂々こんなことをしてくる大バカに心当たりと言えば、アイツしかいない。 「ア〜ス〜ラ〜ン〜〜〜!」 「ラクスから聞いたよ!これから身体は大事にしなきゃねっ」 「まだわかんないってば…」 「俺も男の子がいいな〜」 「早まるな!」 いつものようにアスランを殴ろうかともがいていたら、抱きしめられたまま耳元で意外な話を聞かされた。 「ラクスがね…」 「ぇ…?」 「一番望んでいたのはラクスなんだ。無理矢理東宮に立たされていて…ラクスは堅っ苦しい立場は大嫌いだから、ずっとこの立場を退きたいっていうのは聞いていた」 「アスラン……」 「だから…男の子だったらいいなって」 優しく語りかけるアスランに、今までのことを忘れてキラはしんみりとなった。 「そう言えば、ラクス…好きな人がいるみたい」 ほのめかすようにそう言うと、アスランは知ってると答えた。 「カガリだよ。キラの…お兄さん。東宮を退いて女院になってもらえば、彼女の恋もかなえてあげられるだろう?」 キラは素直に、うんと答えた。 アスランの望みも、ラクスの恋も、両方かなえてあげたかった。 「だから、男の子v」 「それもわかんないよ」 「うんv」 その日の昼過ぎ、カガリが訪ねてきた。 「キラ!おめでと。男の子だってな」 相変わらずのカガリにキラは溜息をつく。 「あのねカガリ…。そんなこと今判るわけないじゃん………」 「あ………」 「あ、じゃないよ。まったくもぅ!どうせラクスに余計なことを吹き込まれたんでしょ!」 「余計なことかどうかは知らないが、ラクスが言いふらしまくってたぞ」 急に恐ろしくなる。 「………なんて?」 「尚侍に男の子ができた!これで安泰!私は自由だとかナントカ…」 「…………………」 「そんなことよりキラ。一応父上にも伝えておいた。飛び上がって大喜びしてたぞ」 「はぁ……」 また部下たちが大迷惑してただろうなとか、そういうことがリアルに脳裏に再現されて、笑いが乾いた。 「それと、気にかけてたイザークのことなんだがな。まぁ、色々あったが、仲直りしたから」 「え?」 あのイザークがよく理解したな…とか、よく諦めたな…とか。キラの頭上に?マークが並んだ。 「しつこく迫ってきてさ、最初はもうどうしようかと思ったんだが」 「よく納得してくれたね?」 「証拠があるんだ。理解するしかないだろう?」 証拠?と考えてキラの視線は宙をさまよった。 待て! いわゆる「男である証拠」というと…その………もしかして!などと青ざめていたら、扇子で頭をぱこっと叩かれた。 「何考えてんだお前は!」 「だって…男の証拠と言えば………ごにょごにょごにょ…」 「あのな。他にもいくらだってあるだろう。野太くなった声とか、体格とか、生えてくるヒゲとか………」 「あ”…」 「ドコ想像してたんだバカモノ!」 「…ごめん」 「もう大丈夫だぞ、キラ。色々あって一時期は恨んだけど、会ってみればいいヤツだった」 「ごめんねカガリ。僕の代わりに、仲良くなれそう?」 「大丈夫だ!」 「そぅ、良かった」 それからきっかり8ヶ月後。アスランとラクスが狂喜乱舞した。 「ありがとう!ありがとうキラ様!これでやっとわたくしも晴れて自由の身ですわ〜〜v」 「…ってラクス、捕まってた訳じゃないんだから……」 「そんなことはありませんわ!キラ様のおかげで、これから全然!まったく!なぁんの遠慮もなくカガリを捕捉できますっv」 「……………」 「こんな面倒くさい立場から退いてしまえば、あとは取って食おうが煮て食おうが、思いのままですわ〜〜〜!」 キラは理解した。そこには…カガリの意思は、ないらしい。 「それではキラ様、ごきげんよぅ〜v」 と言い、ラクスはその重い衣装も何のその、軽やかなステップでキラの前から去っていった。 「………あの調子で…カガリは食べられちゃうのか………」 ち〜〜〜〜〜ん。 キラの頭の中で、そんな音がした。心の中で兄に謝った。 ごめん…と。 「キぃ〜〜〜ラぁああ〜〜〜〜〜っv居るぅ?」 一難去ってまた一難。 今度はアスランがご機嫌で左大臣家にやってくる。全速力で突っ込んでくる変態の顔面にこぶしをめり込ませながら、キラは怒りに震える。 「静かにしてって言ってるでしょ!今、ご機嫌なんだから!」 見るとキラが赤ん坊に乳をやっている。 「あ”〜〜〜っ!何するんだ!それは俺専用のッ」 その瞬間、都中の人々が「空飛ぶアスラン」の姿を見ることになり、怪奇現象として長い間言い伝えられた。 その後、キラがどうしてもとねだるので、最初だけキラに授乳させたが、その後は一切そういうことをさせなかった。 曰く…長く授乳してると、胸の形が崩れるだろ……だそうだ。 で、結局その功績を持って、色々と人事に変動があった。 ラクスはめでたくフリーに。 キラはいったん女御を経て中宮に。 ついでにカガリは内大臣に。 イザークも護送船団方式で権中納言になり、中宮大夫となった。 物語的にはめでたしめでたしとなった………はずなのだが、不満を抱える人が約一名。 「アスラ〜ン!!!」 「ん〜〜〜?なぁに?キラv」 「僕、もう打ち止めぇッ」 「無理〜v止まんないv」 「もう充分でしょ!男の子3人、女の子一人居れば!」 「もう一人くらいは女の子欲しいなー」 「モウ限界デス!5人目はムリ!絶対ムリ!!!」 「こんなにもキラのこと愛してるのに〜」 「愛してるなら、僕の苦労も考えてよ!」 「ぶ〜〜〜〜〜!」 「だから!ブーイングしない!ね、さすがに他の方法も考えよ?キスだって僕からもするからさ、一日中舌入れてたって怒らないからさ〜」 「う゛…っ!それも……いい。悩むなぁ〜〜〜」 この二人と痴話げんかは、切っても切れない関係になったと言います。 長編インデックスへ戻る→ 駄文トップへ戻っちゃう→ 桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜*桜 言い訳v*ながながとお付き合いいただき、まことにありがとうございました〜。 なっかなかアスラン出てこないというのも、長編でしかできないんですが、それにしても出てこなかったな〜。こんなにアス×キラ前提なのに…(笑) |
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