**A Happy New Year*A Happy New Year**

Happiness Medicine

**A Happy New Year*A Happy New Year**

 

 

ディアッカ→アスラン

 

 大晦日。

 パァアアアンッッ!と盛大な音が響き渡り、そしてアスランの頬には派手なびんたマークができていた。 


「もぉ大ッ嫌い!君ってそんなこといつも考えてたんだ?見損なったよ!じゃあね!もうこんりんざい僕に近づかないで!」

 

 

 大声でキラが叫び、そして彼女は周囲に怒りオーラをまき散らしながらザラ家をあとにした。

 

 

 

 1時間後…さすがの沈黙に耐えられなくなった(そりゃそうだろうここは彼以外無人)アスランがもともとの元凶に苦情を言う。電話に出るなり怒鳴られたディアッカが耳をキンキンさせながらもイタズラっぽくニヤリと笑った。

 

 

「お前のせいだぞ!」

 

「なんで?お前に渡しといただろ?先に見なかったお前が悪いんだよ」

「バカ野郎!俺とキラの心を近づける特効薬、なんて紛らわしい言い方するからだろ?キラから聞くまで知らなかったんだ」

 

 

 

「え?先にキラちゃんにバレちまったの?そりゃ大変だろう」

 

「ディアッカ……もう、遅いよ。遅かったよ!キラ…もう俺の家を出ていったあとだよ」

 

 

 

「あ〜〜〜あ〜〜〜」

「お前のせいだろうがッ!!!」

 

 

 

「あ〜わかったわかった。今度なんか埋め合わせするからさ。…で、お前に貸したディスク、どうなったんだ?」

 

 ディスク……それは先ほどキラが言っていた「イヤラシイ変態ポルノ」だろう。間違いなく……。

 

 

 

 確かにうかつだったのだ。クリスマスの日、俺はめでたくキラと両想いを確認して幸せだった。キラからも頬を赤らめて好きだって言ってくれるようになったし、キスだって毎日できるようになった。

 

 幸せの絶頂期、ディアッカが「そろそろだろ?」とか言いながら俺に紙袋入りのディスクを押しつけて(ディアッカ思考で貸す、という)帰ったのだ。ところが当然そんなどぎついものに興味のなかった俺は、リビングに置いたままキラを家に上げてしまったのだった。

 

 

 それを、キラが見つけてしまって…表紙を見て固まっているところで鉢合わせ………で、今に至ってるというわけだ。

 

 

 

 

「知らないよ!キラが、怒って持っていった」

 

 

 俺は一刻も早くこのテの話題から離れたかった。しかし…そうは問屋がおろさなかったようで……俺の不幸は続くハメになる。

 

 

「えっ?ちょっと待てよ、アレ…レンタルなんだ………」

 

 

 

「………………え”?」

 

 

 アスランは携帯電話を耳に当てたまま固まった。レンタル?だって、確かさっきキラが

「こんなの捨ててくるからッ」

とかなんとか言って紙袋ごと持ってっちゃったよ……?

 

 

 

 

「なんでそれを先に言わないんだディアッカ!キラが捨てるとか言って持ってっちゃったじゃないか!」

 

「ハァ〜〜〜〜〜!?信じらんね!とにかくキラちゃんに謝るなりなんなりして返してくれよ。俺延滞料金払うのやだぜ」

 

 

 

 アスランは近所迷惑構わず怒鳴り返した。

 

「もともとはお前のせいだろうがッ!!!」

 

 

「んなこと言ったって見なかったのはお前じゃねぇか…」

 

 

「ディアッカ!お前が電話しろ!キラは俺じゃ出ないんだよ」

「…ッたくもぉ!お前がサッサと見てりゃ問題なかったじゃんよ……」

 

 

 

 諸悪の根元はブツブツ不平をたれながら電話を切った。

 

 

「あぁあ〜〜〜っ!どうすりゃいいんだ…ディアッカのせいで、キラに嫌われたらどうしてくれるんだ!せっかくキラの口から俺のこと好きだって聞けるようになったのに〜〜これからって時だったのにぃ〜〜〜〜〜」

 アスランは頭を抱えて……へたれていた。

 

 

 

 

 

アスラン→ニコル

 

 電話はなかなか繋がらなかった。たっぷり呼び出し3分半。やっとの事でキラが電話に出る。

 

 

「あぁ〜〜〜キラちゃん?」

「あ…ディアッカ!こないだはごめんね。でも僕、もうアスランと別れてきたから!」

 

 

 キラは憤慨している。

 ところがこれはディアッカにもチャンスであった。下手に「ディスクはどこ?」と聞いて怪しまれることもなさそうだ。

 

 

 

「どうしたの?アスランのヤツ、なんかした?」

 

「もぉ聞いて!ディアッカ!アスランやっぱとんでもない変態だった!せっかく一緒に過ごしたくて、ご飯作って持ってったら……そ、その………」

 

 

 おっしゃおっしゃ!とりあえずアスランを悪者にしてディスクの在処を聞けそうだ。

 

 

 

「何?キラちゃんにヘンなコトしたとか?いきなり襲ってきたとか?」

 

「違うんだ…でも、似たようなものかも。あのねっ…部屋に、ヘンな変態ポルノのアダルトディスクがあって……なんかすごくわいせつなヤツ!きっといつもそう言うことしか考えてないんだって思って、僕あったま来ちゃって……」

 

 

 

 

「変態ポルノのアダルトディスク……?」

 

 

 はて?そこまで過激なモンでもなかったが…とディアッカは首をひねった。が、しかし免疫のないキラから見ればそういうものかも知れない。

 

 

「うん!すっごくヤラシイの!こんなのずっと見てたら頭おかしくなっちゃうじゃない?で…さっきニコル君にばったり会っちゃってね。僕怒ってたからこの話したら、ニコル君が処分してくれるって言ってくれたの!」

 

 

 

 

「ニ…ニコ、ル……」

 

 

 ディアッカは全身から血の気が引いていくのを感じていた。ヤバイ!早くも行き詰まりか?

 

 

「良かった!やっぱ持つべきものは友達だよね〜〜〜」

 安心したように喋るキラ。彼女にはこれ以上何も言えなかった。

 

 

 

 キラとの電話を無事に切って、すぐにアスランにかけ直す。

 

 

 

 

「何………?」

 

「イヤだからさぁ…キラちゃんがもうニコルに渡しちまったって……でさ、お前かけてくんね?俺ニコルに信用ないんだよね〜〜〜」

 

 

「ハァ〜〜〜?」

「だからスマン!アスラン、お前が取り返してきてくれ!あとで絶対なんかおごる!」

 

 

 

 受話器の向こうでアスランが怒りに震えているのが感じとれた。

 

 

「おごれよ!ディアッカ!このツケ全部お前が払えよ!」

 言い捨てて無造作に通話は切れた。

 

 

「俺…ヤバ過ぎ!………しかも今月ピンチなんだよな〜〜。アスラン、手を抜いてくんないかな〜〜〜」

 ひとりごちるも、到底無理そうだった。

 

 しかも相手はあのザラ家の一人息子。金銭感覚なんかも、ディアッカと違って当たり前だった。

 

 

 

 

 

ニコル→ラスティ

 

「あ、電話だ。今日はなんか面白いことがありそうですねぇ〜〜〜」

 ニコルがニヤリと笑う。周囲の通行人のいく人かが、まともに聞いてしまってぞっとなっていた。

 

 

「ああアスラン!どうしたんですか?今頃キラちゃんと一緒じゃないんですか?」

 

 知ってはいたが、一応確認してみる。

「いないよ!ディアッカのせいでキラが怒って帰っていったんだ」

 

 

「ディアッカが?何したんですか?」

 

「あの野郎、俺の家にアダルトディスク置いていきやがって!それがキラにばれたんだ」

 

 

「アスラン知ってたんじゃなかったんですか?隠しておけば判らなかったのに…」

 

「知らないうちに置いて帰ったんだよ。あいつが帰って電話もらってから初めて知って…でも俺にはそんなの要らないから、返そうと思ってリビングに置いたままだったんだ」

 

 

 

「あ〜〜あ………」

 

 

「……で、今はお前が持ってるんだろ?そのディスク。アレ、レンタルだったらしくてさ…取り戻さなきゃいけないんだ」

 

 

 

 

 ニコルはやっと合点がいった。ははぁつまりそういうことか。確かにディアッカからかかってきた電話には自分は出ない。

 

 

「え?でもアレもう譲ってしまったんですよ。僕もう持ってないですよ」

 

「だ…っ、誰に……?」

 

「ラスティ。こういうものはむげに捨てるより、必要な人にあげる方が喜ばれるでしょ?もったいないから、片っ端から電話して聞いたらラスティが欲しいって言ってきたし、僕だってこんなもの持ち歩いてても気持ち悪いからあげちゃいましたよ」

 

 

「それを早く言ってくれ……」

「ああごめんなさい」

 

「じゃ、ラスティには俺から電話かけるから。あ、そうそう!後でディアッカがおごるって言ってたぞ」

 

「わぁ!やったぁ!ごちそうになりますvディアッカv」

 

 

 ニコルは当初の目的を完全遂行し、大満足して通話を切った。

 

 

 

 

 

ラスティ→イザーク

 

「ラスティ!」

「おお〜アスランか?どした?俺今ミゲルと一緒にイイもの見たあとで、ご機嫌なんだよね〜〜♪」

 

 

「そ…それはヘンな変態ポルノAVか!」

 

 

 

「……………。アスラン頭湧いてねぇ?キラちゃん悲しむぜ、彼氏の頭がオカシくなったって言ったらよ」

 

 

「おかしくもなるさ!ディアッカが押しつけたそいつのせいでキラに逃げられたんだ」

 

 

 

「あ”あ”〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………」

 

 

 

「とにかくその変態ディスクを返せ!」

 

「変態変態…ってそれ程でもなかったじゃん『カノジョの尻追い日記6』……フツーだぜコレくらい……って、お前見たんじゃねぇの?」

「見るわけないだろう!そのままディアッカに返すつもりだったんだ」

 

 

 

「……で、キラちゃんにバレた……と、そーいうことか。あー可哀相に〜〜。俺だったらなんのかんの言いくるめて…勢いのままガバーッといっちゃうけどね〜アスランには無理か……」

 

 

「余計なお世話だッ!いいんだ、キラとはゆっくりで!」

 

「下手にがっついて嫌われたくない?このへたれが〜〜〜そんなこと言ってっと、今年が来年…来年が再来年……でもって白髪になっちまうぜ?」

 

 

「やかましいッ!人を唐変木のように言いやがって!俺にだって、ペースとか計画とか…とにかくそーいうものがあるんだ!放っといてくれ」

 

 

「へぇ〜〜あんの?お前にも?一応欲情ってモンが………」

 

 

「キラに手を出したら命はないものと思えよ……」

 

「知ってるって…と言うより、お前じゃなきゃ気づかねぇよキラちゃんは…」

 

 

 

 

「……で、今そこにあるんだな?」

 

「ん?どーだっけかなぁ?おぉいミゲル〜〜あのディスクどこやった?……え?…あは!」

 

 

 

「………?もしかして…もう、ないのか?」

 

「……………。いや、ある。いいかアスラン、落ちついて聞いてくれ。ミゲルがさっき、イザークの部屋に置いてきたって………あ!オイッ」

 

 

 ブチッ!ツーツーツー………。ラスティは因縁の対決を予感した。

 

 

 

 

 

 お世辞にも仲はいいとは言えないが、例のディスク回収とキラへの愛を取り戻すため、アスランはイザークに電話をかけ、瞬く間に怒鳴り返された。

 

 

 

「キサマかぁーーーーーッ!!!あんないかがわしいものを俺の部屋に置いていったのはッ!」

 

「違う!俺はディスクを回収するため探してるんであって、持っていったのはミゲルだ」

 

 

 

「この期に及んでヘタな言い逃れを〜〜〜」

 

「待てイザーク!どう考えても今俺があんなものを必要とするわけがないだろう」

 

 

「…………………………」

 

 

「現にそのせいで俺はキラに振られたんだ!迷惑してるのは俺の方だ!」

 

 イザークの怒りが一瞬でダウンする。

 

 

「何?じゃぁコレはお前のじゃないのか?」

「とぉ〜〜〜ぜん、ディアッカのだ!しかもアイツそれレンタルだって言ってきて…。大体そうでもなきゃ俺がお前にかけるわけないだろ!」

 

「………。確かに。じゃぁこれはディアッカに返せばいいんだな?」

「イヤ俺に渡してくれ。お前の部屋の近くまで来てる」

 

 

 

 5分後、果たしてイザークとアスランは会い、アスランが事情を説明し、頭にげんこつを盛大に食らって別れた。

 

 

 あとから、ミゲルがイザークの部屋にディスクを置いていったのは完全に好奇心からであったことが判明し、おごる側の人数は3人に増えたという。

 

 

 

 

 

「ディアッカぁあああっ!お前のためにわざわざ走り回って取り戻してきたぞ!取りに来い!」

「へいへい!スンマセン!あ…それと罪滅ぼしにさ、キラちゃんに事情を説明しておいたからさ……今からでも迎えに行ってやれよ」

 

「当たり前だ!」

 

 

「それと、ついでだからお前そのディスク使ったら?」

「使うか!」

 

 

 

 

 

 30分後。キラに電話をかけ、彼女の家まで迎えに行き、そして二人は再びザラ家に戻ってきた。日付はとうに変わっていて……さんざんな大晦日になってしまった。

 

 

「ごめんねアスラン。僕知らなくて思いきり叩いちゃって……痛かったでしょ?」

 

「うん、痛かった。でも、キラがこうしてちゃんと戻ってきてくれたから、それだけでいいんだ」

「ごめん……早とちりしちゃって…アスランのこと好きなのに、信じられなくなっちゃって………」

 

 

 

「いいんだよ。判ってくれたから。大晦日は散々だったけど、もう日付が変わっちゃったから、新年だね。キラ…今年も、その……俺のキラでいてくれるかな?」

 

 

「うん!あけましておめでとだね。今年”も”よろしくねアスラン!」

「俺も。あけましておめでとうキラ!今年もよろしく」

 

 二人は久しぶりに笑い合う。その笑顔がアスランにはまぶしかった。

 

 

 

「あ…そうだ!あのヘンなディスクは?」

「さっきディアッカに取りに来させた」

 

 

「良かった!あんなの見て僕、びっくりしちゃって…。みんなあんなコトしてるのかな?アスランもそんなこと考えてるのかな?って思ったら……」

「そりゃ…全くないって言ったら……ウソになるよ。でも、あんなのなんかなくったって、俺たちは俺たちのペースでゆっくりしていけばいいんじゃないかな?」

 

 

 

 キラは真っ赤になっていた。アスランはそんなキラに軽いキスを送り、ソファに座るように促す。

 

「こんなとこじゃ、ヤダなぁ……」

 

 今度はアスランが真っ赤になっていた。思ってもみなかったキラからの言葉に、一瞬息を詰まらせ、のどをごくりと鳴らし、それでも気をしっかり持ってゆっくりと寝室へエスコートする。今ここで引いたら男がすたる…ような気がした。

 

 

 アスランの寝室で、彼女を優しく押し倒し、深く口づけたところでキラがやっとのことで事態に気がついた。

 

 

 

「あぁああアスランっ!…まさか……ッ」

 

「大丈夫!キラが嫌なら、ちゃんとやめるから…少し俺に任せて………」

 

 

 

 

 

 翌日。昼過ぎにディアッカから電話がかかった。

 

「あ〜アスランか!どうだった?」

「……?何がだ?」

 

 

「ちゃっかりヤっちゃったんだろ?ひめはじめ……」

 

 

 額の青筋が一気にブチッと切れたかと思った。

 

 

 

「今さら元凶が何を言うかーーーーーッ!!!!!」

 

 

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言い訳:正月から何書いてんでしょうね(笑)タイトルのMedicineは薬という意味です。はい、察しのいい方はお気づきになったんじゃないでしょうか?アダルトディスクのタイトルが『カノジョの尻追い日記6』…で、ディスクが渡った順がディアッカ→アスラン→ニコル→ラスティ(&ミゲル)→イザークで計6人。「尻追い」→「しりとり」になってます(ニコル→ラスティが厳しいけど)。

 当初は「いっちゃうか!」と思ってたんですけど、前回が「キス止まり」だったんで、イキナリそーいう展開はないだろう…ということでいっちゃってませんよ(笑)アスランへたれだし(笑)

 だって時間軸が「Happiness Basket」の後なので1週間しか経ってませんもん(笑)

 

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