**Merry Christmas*Merry Christmas**

Hppiness Basket

**Merry Christmas*Merry Christmas**

 

 

 目の前には可愛い女の子がいる。

 

 彼女が前触れもなく俺の部屋にやってきて数時間。ずっとゲーム

画面とのにらめっこだ。

 

 今日は12月24日。明日はクリスマス。

 でもって時間はもうすぐ午後9時になろうかというところ。

 

 そりゃ、俺は一人暮らしだから、コレで即刻親から怒られるって

ぇ訳じゃない。

 

 

 しかし…しかしだ!これで手を出せるような子だったら、速攻で

ベッド行ってんのによ!

 

(なんで俺が可愛い娘目の前にして生唾飲んでなきゃなんないんだ

よ!?なぁ、アスランよ!)

 ディアッカは天を仰いで今はいない相手に小さく毒づいた。

 

 

 

「しつこいようだけど、アスラン来てもここにいるって言っちゃダ

メだからねっ!」

 

 

 ああ…キラの目がギラついている………っつーか!アスラン!お

前なにやってんだよ!

 

 

 

 

 

「なぁ……そろそろ教えてくんない?アイツ、何やったの?」

 振り向いたキラの目が怖い。相当怒ってるって事だけは、よく判

る。

 

 

「あ〜〜〜聞きたい?そんっなに聞きたい?」

 ごめん……悪いけど、俺には何のことだかサッパリ判んねぇよ…

……。

 

 

 

 

 

 1時間後。俺はキラの怒りが理解できたよ。つまり、こういう事

だ。

 

 とにかくアスランは街をぶらついていて、地元のTV局の連中に

つかまったわけだ。ほら、よくある夕方のニュース・情報番組の街

角コーナーってヤツだよ。

 まぁ性格はともかく顔だけはいいからなアイツは(ディアッカ偏

見)。クリスマスも前だからって、そっち関係の話になったんだろ

うよ。

 

 

 いやまぁね、あいつの気持ちも判らんでもないよ。告ったところ

で当のキラは全然気づいてなかったんだから。

 そりゃキラだってポケポケすぎるところはあるよ(ディアッカ偏

見)。

 

 

 まぁでも、アレはないわな………。公共の電波を使って堂々と、

イブの夜にキラをモノにする宣言は……。別ルートのウワサによる

と、その後気絶した女の子が続出して救急搬送は大変だったとか。

気絶するほど絶望的なことかね?アスランに彼女がいるってことは

よ(ディアッカ実感)。

 ま…俺には関係ねぇ話なんだけどよ。

 

 

 

 ま…そんなわけで、キラは俺の部屋に「逃げて」来てるわけだ。

ラクスのところの方がいいんじゃないのかとも聞いたが、どうやら

彼女は芸能活動方面でのクリスマス会とやらで、いないんだとか。

 ちなみにイザークのところにも押し掛けたらしいが、さっさと断

られてしまったらしい。っつーか、そんなメンドーなことに巻き込

まれるのがイヤだったんだろうなイザークは。よりにもよって相手

がアスランだしな〜(おそらく本音だろう)。

 

 

 

「な、キラちゃん。なんか食べる?コンビニでもいいなら買ってく

るけど…」

 

「……うん、僕おでんがいい………」

 再びにらめっこしているゲーム画面から目を離すこともなく、キ

ラはけだるそうに答えた。

「オッケーイ」

 

 そう言って、雪の降るなか俺は一人夜食を買いに行く。男の一人

暮らしなんだ。メシなんかマトモに作るかよ!

 

 

 

 

 

 買い物をして、部屋に帰ってくると、いたよいたよ玄関先に問題

児が!俺んちのチャイムをこれでもかと鳴らして、悲壮感ただよわ

せて泣き叫んでやがる。

 

「うるさい!近所メーワクだろうがよ……」

 俺はアスランの背中に強烈な足蹴を食らわせ、あきれながらもそ

う言った。

 

 

「ディアッカ!隠すと為にならんぞ!キラがここに来ているのはほ

ぼ確実なんだ。中に入れろ」

「来てねぇよ。大体こんな時に一人モンの男の家の前で叫ぶな!お

前、そっち系だと思われるぜ」

 

「い〜や!確実にここなんだ!お前が持ってる袋の中身はお前一人

で食べきれる量じゃないし、袋の中身はキラの冬の大好物のおでん

だ!」

 

 

「あ〜もぅ!訳わかんねぇこと言ってないで帰れよ。キラちゃんも

自分とこ帰ってるかも知んねぇぜ?」

「あーそれはあり得ない!」

 

 

 

 俺はため息をついた。ここまで判ってるヤツが、なんでこんな時

に限って怒らせるような真似するかね?そのせいでとばっちりが俺

んとこ来てるっていうのにサ。

 

 

「知らんぞ俺は!」

 

 そう言って俺はドアを開けて入ろうとすると、アスランも最後の

抵抗を見せる。アスランのヤツ、俺がどうしても入れてくれないと

判ると、開いたドアの隙間から中に向かって叫んだ。

 俺は頭を抱えた。コイツの思考回路さえおかしくなかったら、俺

はコイツを格好いい、なんて思える女の子たちを理解できるんだが

なぁ……。

 

「キラ!そこにいるのは判ってるんだ。頼むから出てきてくれ。俺

、キラが出てくるまでここで待ってるから…間違ってもディアッカ

なんかに身体許すんじゃないぞ!!!」

 

 

 

 ドアがバタンと閉められる。俺はさすがに気になって、キラの様

子を覗き込む。

 

 案の定、彼女は猛烈に怒っていた。あ〜あ〜湯気が立ってるよ。

 

 

 

「最後まで言わなきゃよかったんだよな?」

 

「そのとおり!」

 地を這うようなキラの怒りが部屋中に立ち込める。キラも不幸だ

が俺も不幸だと思った。これって、とばっちりって言うんだよな?

 

 

「いいから!ほっときゃいいんだよ。ね、ディアッカ、それよりも

僕のおでん、ちゃんとタマゴと大根入れてくれた?」

「バッチよ!俺もおでんにしたから、量だけはたっぷりあるぜ」

「やたっ!」

 その後、二人で二人半前のおでんをたいらげ、キラちゃんにベッ

ドの使用権をあげて、俺たちは寝た。

 

 

 

 

 

翌朝。

「もういいのか?」

「ぅん。も、帰る。ごめんねディアッカに迷惑かけて」

「イヤ…いい、どーせ俺一人モンだったし。楽しかったよ」

 

「……うん、ごめん」

 

 

 少し寂しそうに笑って、キラは玄関を開け、そして飛び上がって

驚いた。

「ディアッカ!ゆ…ゆ、ゆ雪だるまが!」

 汚い話、俺は今飲んでいた番茶を吹き出してしまったよ。慌てて

キラちゃんとこに行くと、キラは玄関先でほろほろと泣いていた。

 

 

 

「アスラン……一晩中、ホントに待ってて……く、れ………」

 

 あ〜俺ってなんて不幸なんだろうなー。なにが楽しくてアスラン

のはにかんだような笑顔を見なきゃならんというのだ。

 

 

 

「キラは、ちゃんと眠れた?寒くなかった?」

 

 俺は心底こいつをバカだと思ったよ。

 

 

 

 後から聞いた話、俺はここでさっさと部屋に戻ってよかったとし

みじみ思った。近所のオバサンの証言によると、この後感極まった

キラが泣きながら、アスラン(多少の雪付)と熱いキスを交わして

たそうで。正直、当てられなくてよかったぜ。

 

 

 

 

 

 

12月25日、昼。市内、アスランの部屋。

 

「キラ、おでんは昨日食べたんだよな……?」

「……うん。昨日、すごい雪だったし、まさかアスランがああして

ホントに一晩中待っててくれるとは思わなくって……その、ディア

ッカとヤケ食いしちゃった……」

「いいんだ。じゃ、別のにしようね」

 

 キッチンからいい臭いが消えない。ちょっとした後ろめたさも消

えない。…ってか、マジな話アスランの作るおでんっておいしいか

ら、誰にも言えない話、生唾が……。

「夜食べようよ!ね、作っててくれてたんでしょ?」

 

「うん…3日前から……、キラの好きな柔らかいすじ肉を入れたく

って」

 

 

 床でぽたぽたという音がする。

 

「ごめん……ごめん、ね」

 

 

「あぁもうキラ、泣くなよ。お前に泣かれると、どうしていいかわ

かんなくなるから…」

「ごめん………ご、め…」

 

 キラはリビングに立ちつくしたまま、泣きじゃくった。アスラン

はキラに寄り添い、そっと抱きしめる。泣きはらしたキラとふと視

線が合う。気がついた時には彼女の唇を奪っていた。ゆっくり顔を

離すとその愛らしい唇がぷるんと揺れた。

 

 

 

「じゃぁ…さ、クリスマスの夜は俺と一緒にいてくれる?」

 

「うん」

 

 

「できたらこれからも…その、キラとは一生ずっとそばにいたいな

……」

「アスラン欲張りすぎ!」

「あ…ごめん」

 

「…でも、いいよ」

「……え?」

 

 

「ずっと……一生ずっと一緒でも、いいよ僕…」

 

 その日はおでん(アスラン渾身の力作)。ムードもなにもあった

もんじゃなかったけど、キラは幸せそうだった。

 

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言い訳:自作素材集の中から一度は使ってみたかったクリスマス用ライン(タイトルんとこ)
こ〜いう時でもなきゃ使えないもんね(笑)

 ……で、中身。まァ…ね、初めっから判ってたことなんですけどね。所詮秋山にシリアス・

ラヴは無理なんですよ(開き直り)約束のイブなんてとうに過ぎ去り、シャンパン&ツリーと
いう世間様のお約束もおでんにすり替わるぅ〜。しかも番茶ときたもんだ(もう戻れんな…)

 おでん…あの味の染みた大根はおいしいですよ♪ほっこりしますvあとすじ肉ってのは本
当に3日くらい煮込んだら、口の中でとけるくらい柔らかくなって、お魚大好き人間の秋山
でもおいしいと思います!

 

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