がくえんラプソディー



キラ(♂)の場合 ふたごのにおい


<前編>



 ある日突然……………あり得ないことが起こった。



「ぅ…わッぅあわぁぁあああああッ」


 寝不足になるほど夜更かしした記憶はない………が、元来のねぼすけキラはまだまだ惰眠をむさぼっていたい午前6時半。突如耳元で絶叫され嫌でも叩き起こされた。


「もぉッ!何だようるさいなぁ朝から〜〜っ!ってかシン!
朝から僕の枕元で嫌がらせするなら自分の部屋に帰ってよ!!!」

 と言って大好きな布団に潜り込む。ところがいつまで待ってもシンが部屋から出ていくような音はしなかった。


「キラさんキラさん!」

 なんだか必死そうなシンの様子だが、そんなことはキラにとってどうでも良い。


「あのね!
アスランに見つかると面倒なことになるから、早く帰った方がいいよ」

 窘めるのは一応相手がアスランだから。一応この間、念願だった婚姻届を出すことには成功したらしいが、彼の意外な一面を知るキラにはこの状況は限りな〜くマズイ!


「俺だって帰りたいけどコレじゃ帰れないですよ」

 何とかしてください…と言わんばかりの口調だが、キラが何かイタズラをしたとかいう記憶もない。全くない。だってそれは………。



「アスランがわざわざそんな訳分からないコトするわけないだろ!もぉいい加減止めないと本当にアスランが……………ぁ…………………ぁあ!!!?」



 キラの目の前に見えるシンは………下半身がスケルトン状態だった。



「ナニしてんの?」

「それが分かれば苦労してないですよ」

「シン、下半身は?」

 見る限りキラから生えているみたいだが、その辺はスケルトンが激しい。


「下半身どころか、上もスカスカですよ」

 シンが手をヒラヒラする。そのたびにそこにあるはずの家具を通過していった。そして瞬時に導き出される可能性は……………。





「「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」」





 一応確認のためシンの身体を触ってみる。


 スカッスカッ☆



「「ぎゃぁぁあああああっq3☆の☆Σp」」



 シンは………キラの背後霊になっていた。





「じゃぁ…じゃぁ!もしかして……」

「ええ…離れられません」

 と言うことは朝から晩まで!?ナニからナニまで!!?食事から学校からトイレからお風呂から………そしてそして……………。



「アスランが僕に構いまくってくるのもぜんっぶ!見えちゃうってことなんだよね?」

「………たぶん…?」


 マズイマズイマズイマズイ麻酔マズイマズイマズイマズイマズイ麻酔(ん?アレ?)



「言っとくけどアスランしつこいよ?」

 
そっとお願いしてみる見ないでくれ。


「何がですか?」

 キラは恥ずかしそうにうつむいて、蚊の鳴くような声で答える。


「あの…ね?アスラン時々寝ぼけて……僕とカガリを間違えちゃう、から」

 アスランのとんでもない悪癖…それは寝ぼけ間違い。しかもカガリと間違えて時々キラだと朝まで気付かず弄んじゃうことも…。だがキラの微かな希望は簡単にうち砕かれるインパルス!


「それって俺が後ろ向いてても、声とかばっちりだと思いますけど」

 つまり、キラの気持ちよさそ〜〜〜なあの声とかその音とか。だって双子なんだもん!好みから触られて嬉しい場所から思わず出る声までそっくりすぎて………困ってる。


「やだっ!耳塞いでてよッ」

「今俺全身スカスカなんスけど」

 シンだって出来るものならそうしたい。だってアスランも男ならキラも(一応)男の子。ちなみにシンの恋人はふつーにステラで…つまり彼はノーマルに女の子が好きなお年頃の男の子なのである!



「なんで!何がどうなってこうなるのさ〜〜〜」

「ソレ俺だって知りたいです!!!」

 ちなみに恐る恐る寮の廊下で友人とすれ違ってみるが、どうやらシンの姿はキラにしか見えないらしい。

(それはソレでめちゃくちゃビミョーーーーー………)







 悲しくなりながらもキラは、アスランが寝ぼけたまま間違いを犯さないよう念じるしかなかった。そしてアスランの行動がやばくなる時間は食堂に行ったりして部屋にいないようにすることにした。


「ソレが一番現実的っすね」

「とにかく君が離れるまで、避難することにするよ。要するにアスランがちゃんと
部屋を間違わなかったらいいって話なんだから。うん」





 でもって早速その日。


「ないっ!無い無い無い無い無ぁあああいっ!シン!知らない?」

「何がですか?」

「この部屋のカギ…」


 つまり、無くしたらしい…。



「キラさん?」


「ん?」



「……………。んなの俺が知るわけないでしょーーーーーがッッッ!!!!!」



「シン君何で怒ってるのさ!もう、泣きたいのは僕の方だよぉ」


「俺だって泣きたいです!」

 だってだってだぁってえ!部屋のドアのカギが見つからないということは、簡単にアスランの侵入を許せるってことで。それはキラが美味しそうに遊ばれちゃうってことで。それをシンにガッツリ見られるってことで。



「「ギャーーーーーーーーーッ!!!!!」」



「アスランさん、今日は間違わないと良いですね…」

 そこではたとキラは気付く。


「そうだ!カガリに部屋代わってもらおう」

「ぇえ〜〜〜〜〜っ!!?」





 しかし、キラがカガリの部屋に行った時、事態はさらにややこしくなった。


「そんなもん、私だって無くしたに決まってるじゃないか」



「「あぁぁぁぁあああぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁあああああああッ!!!」」





 OH MY GOD☆さすが双子だサクッと軽〜く言ってくれるZE☆







 そしてひたすら無駄に時間は過ぎる。結局何ら有効な案が全く出てこないまま、ふっつーに授業は済み、放課後も終わり、貴重な夕食うんぬんの時間も過ぎていった。


「アスラン今日は間違いませんようにアスラン今日は間違いませんよぉ〜うに!」





 夜10時半、ドアの陰から金属バットを持って待ちかまえるキラ………+背後霊のシン。ドアの外を誰かの足音がコツコツと音を立てて通り過ぎていった。



「行ったんじゃないスか?」

「行った…かな?今夜は何とかセーフそうだね」





 気を抜いたその時。

 
ガチャリ☆☆☆



「行きすぎたっごめん………」


<中編>

 気が付けば既にアスランに抱きしめられていた。なんだかその頭には
犬耳が、お尻には尻尾がぶんぶんと嬉しそうに振られているんじゃないかという勢いで。

「行きすぎてないっ行きすぎてないっも少し向こう!アスラン
間違ってるよ部屋っ」

 けれどアスランに動じた様子はなかった。

「間違ってない。俺の
好きな匂いだ、ちゃんと合ってる…」

 それはソレで。

「「ギャーーーーー!」」

 んでもって早速…。

「んむ…ッ!んん〜〜〜〜〜ッ!!!んーんーんーっ!!!!!」

「ギャァアアアアアッΣ’□’3」

 どけたいどけたい〜〜〜っ!ア〜スランの寝ぼけ〜キ〜ス、い〜ますぐどけたい〜〜〜!

 一瞬考えた根性悪の唇噛み切ってやろうか。んが、都合の悪いことにそれでは自分の舌も噛み切ってしまいそうなこの濃厚ぶっちゅ☆キラが目を回し、シンが真っ青になっている間に寝ぼけたままのアスランは、心ゆくまでじっくりタップリ昼間会えなかった寂しさをぶつけてきたその間しっかり5分間!

 当然、5分もねちこくねちこくでぃ〜ぷなキスをされ続けたキラは、疲れとめまいでくてぇ………と伸びていた。

「ん〜だめっ!もっ☆キスで酔ってちゃ、だvめvだvよっwww」

 
甘い声出すな!

シン「ダメじゃないッダメじゃないっ!俺見たくありませんからアスランさんすぐに帰ってくださいとっとと帰ってください今すぐ気付いてくださいッ」

 っつーか………。

シン
「キラさんっ気絶してる場合じゃないでしょぉおおおおおッ!!!!!」

「んーっ!可愛いっ愛してるよぉ…」

「ギャーーーーー」

 アスランはキラのタダでさえ細い身体を難なく抱え上げ、シンが一番恐れていた場所に移動させた。その
恐怖の場所の名前を、ベッドという

「………アスラン…」

 上からしっかりその身体を縫い止められたキラが、それでも気づいてもらいたくて彼の名を呼ぶが、身体に力が入っていないせいでその口調が弱々しい。が、それが逆にアスランには切なそうに震える瞳に見えるこのヤバさ!

シン(ヤバいヤバいヤバいヤバいやはりヤバいヤバいヤバい………ん?)

「大丈夫。君を不安になんかさせないから…」

 アスランは勘違い街道をまっしぐらに突き進みつつ遠慮なくぶちゅ〜〜〜〜〜っといっちゃう。同時進行でシンに全部バレていると判っているキラは、もはや
完全に意識を手放していた

 ぴちゃっ☆

 ちゅっちゅっちゅっwwwちゅっちゅう〜〜〜〜〜wwwww

「ん〜〜〜っ好きだよ。好き。愛してるよ。君と結婚できて本当に良かった」

シン(違います違いますっアスランさん!それカガリさんじゃないですキラさんです!あなたの幼馴染みです!ちなみに
首から下はどう見ても男ですッ)

 首から上は否定しないらしいシン・アスカ。だって確かに可愛い。女性らしい胸があったところで違和感がないくらいに。

シン(キラさぁん………帰ってきてくださいよキラさぁ〜ん)

 キラの脳みそは未だに
一時停止中だ。その間にアスランはゆっくり丹念に順番にアチコチ触り倒してはご満悦になっていった。え?キラの身体は無事なのかって?ソリャ勿論痕はバッチリ付いている。

シン(ぅああ〜〜〜やらし〜〜〜〜〜)

 でもってさすがに男の胸には気づくだろうと高をくくっていたシンは、さらなるホラー現象に自分がいかに考えが甘かったかを思い知らされることになった。

シン(気付け!気付けよっ!
キラさん女の子じゃないだろ!悲しいかな全部アンタと同じだろ!

 しかし………………………アスランは、最後まで気づくことはなかった。

 そして翌朝、真っ白な灰になっているシンを一人残し、二人はベッドの中で重なるようになったまま目が醒めた。

「ん……………ん?あれ?あ、なんだキラか。俺昨日キラの部屋に来てたっけ?ん〜〜?ま…いっか」

 
ま…いっか、じゃねぇだろ!

「キラ?あ、まだ寝てるのか。そろそろ朝だぞ、キラ…」

「んん………?アス、ラ…ン………?」

 ほとんど最初から意識を手放していたキラはやっとぼんやり目を覚まし始めた。きっとシンは全部くまなく見ていたんだろうけど、自分は全然覚えていない。妙に身体が気だるいってことは、きっとそういうことなんだろう。今更ながらに考えるだけで顔が沸騰してしまいそうだ。

「あ、キラ起きた。良かった。俺は昨日キラの部屋に遊びに来て、そのまま寝ちゃったみたいだな。おかげでよく眠れたよ。じゃ、俺帰るから、また学校でな」

 キラの頭を軽く撫でてからアスランは当たり前のように部屋を出ていってしまった。


<後編>


 10分後。

「絶対シン、
全部見てたでしょ………」

「スミマセンねぇ…キラさんが
気絶した後もアスランさんホンットに、全然気づかなくって……………」

 Cまではいかなかったが、
非常に濃厚かつ充実したBまでだった。



「やだっもぉ恥ずかしくてどこにも行けないっ!
お嫁さんに行けないよぉっ」

「キラさんの場合
お婿でしょ!」

「あ…そうだった」


 キラの頭をパコッとはたこうとした拳が、むなしくキラの頭をスカッと通り過ぎた。





「見ないでって言ったじゃないっ」


「無理ですよこんな身体で!」

 幽体なのでスッカスカだ。



「じゃぁ知ってたならアスランを止めてくれたって良いじゃない!」

「ちなみにアスランさんには俺の姿は見えてないし、俺がどれだけ叫んだって全然聞こえてませんでしたっ」

 幽体といえど、一応真っ赤になって弁解するシン。

 と、そこへ土煙(何故?)を上げながらカガリが乱入してきた。


「キラっ無事だったかっ!?」



シン(無事じゃないですよッ!ってか、キラさんもキラさんですっ!
女の子みたいにぽすっと座って上掛けで胸隠したりしないッ)

「え?あ、ああ………カガリ」


「朝からアスランが謝ってきたんだ。昨日
部屋間違ったって………」

 キラは寝起きのぼーっとした頭のまま考える。





「カガリ…やっぱり、カギ交換して貰おう」

「うん…そうだな………」


「今度は無くさないようにしようね」

「……………お互いにな」


 アスランが
寝ぼけたままCまで突き進むその前に。





 ちなみに、その後もちょくちょくアスランがタップリ<寝ぼけ訪問>をして1週間後、めでたく二人の部屋に新しいカギが付いた。そんでもって、カギ交換のその日に学校の理事長をしているレノア・ザラがキラの部屋を訪問した。



「あぁ、やっぱりここにいたのね」

「理事長?」


「アスカ君が急に出席しなくなったと報告が来て、探し回っていたのよ」

「え?」

「部屋に行ったらアスカ君、ベッドで寝たまま動かないから、ああ…またなのねって。やっぱり
魂だけコッチに来ちゃってたみたいね。良かったわ見つかって。今元に戻すからね」


 レノアの手が無造作に伸びてきて……………ベリーッという音と共にシンの魂は引き離された。


「ごめんなさいね、迷惑かけたわねキラ君」

 この学校ではよくあることだからまたこういうことがあったらすぐに報告してね、と言って、理事長はシンの魂をむんずと掴んだままご機嫌で部屋を出ていった。ちなみに全てを知ってしまったシンとキラが、翌日からなんだか気まずい学生生活を送ることになったのは二人しか知らない<絶対の秘密>だ。


(終了。キラ♀編もございますのでよければそちらもお楽しみください。)

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